音楽、小説、そして酒を愛する方々との空間です

by はんきち

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東葛とか下総であるとかに戻ってきて一年ほど経った。季節が一回りするといろいろな事柄にも馴染んできて、暮らすということはこういうことなのだと身を以て実感する。

連休となれば、仕事で人に遇うこともなく、だから食べものについても特有の匂いが気になるものも許容できることになる。そういうときに無性に食べたくなるのが「ひさご亭」の餃子。

この店は武蔵野線市川大野駅の近くにあるのだけれど、元々は総武線市川駅北口に網の目のように拡がっていた飲食横丁の一角にあった店の支店。本店が2006年に閉じたあとは唯一の店だ。

ここの餃子はどんな店の餃子にも似たところが無い。大きさは超大振りの稲荷寿司であり、皮は歯で噛みきれないほど分厚くパリパリと硬い。そして中身の具は挽肉と野菜と擦り下ろしニンニクがしっかりした粘度でもってパンパンに詰め込められている。唯一無二だ。

それが高温の油で揚げるようにして長時間焼かれたものなのだとわかる瞬間には、すでに自分の唇やら口の中が火傷しそうになっている。あとの祭りだ。しかし食欲は、そのアツアツのものから距離を置こうという気持ちを退けて尚も突き進んでいく

憧れの中身に到達する。ヒリヒリするほどの高温である。味はかなり甘く感じる。「う、うまい」。醤油と辣油、酢で整えたタレと絡めて食べ進めている。無我夢中になっていたことに気づくのは暫くしてからで、それは、三つ目を食べ始めた頃だ。

一個目と二個目の記憶が飛んでいる。

復活した意識とともに四個目に到達するころには、もはや胃は満腹になっていて、あとの二つをどう始末しようかと、途方に暮れている。

脳内細胞の全てを一時停止させてしまう伝説の餃子は健在だった。

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by k_hankichi | 2018-04-30 16:40 | 食べ物 | Trackback | Comments(3)
近くに昭和の乗り物や日常生活の博物館があると聞いて訪ねてみた。「昭和の杜博物館」→https://www.matsudo-kankou.jp/syouwanomori/

敷地に入るや否や、そこには実家の父親が乗り継いできた車の数々があって、その偶然に驚く。

■富士重工 「スバル360」
■トヨタ「パブリカ700 (800ではない)」
■日産「ブルーバード510」

西東京の新興住宅地の思い出が蘇る。

高度成長期の自家用車ブームを支えた名車の数々や、J.F.ケネディが暗殺されたときに乗っていた車の同型車、映画『三丁目の夕日』に貸し出された日産やマツダの車などなどもあって、それは盛りだくさんだ。

屋内の展示館に入ると、昭和の日用品、電化製品が、あるわあるわ。これだけの物品を取っておくだけでも大変だけれど、ある程度メンテナンスもしてある。

いつしか気持ちはあの時間と空間に繋がっていた。

※注:開館時間金・土・日曜日および祝日、午前10時~午後4時

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by k_hankichi | 2018-04-29 16:34 | 街角・風物 | Trackback | Comments(3)
おでんというと、強いて食べたいというものではなかった。実はそのどこをどう味わえば良いのか、ピンと来ていなかったから、ということもある。練り物、がんも、巾着、玉子に大根などなど、まあ健康的な具が揃っているわけだけど、和辛子をちょいと付けてしまうと、どの具も同じような味に思えて来て、薄い鰹昆布出汁そのものの味が良いんだよ、と言われても、実はあまり同感していなかった。それでも、口寂しくなれば、箸を運んで腹を満たしてはいた。

友人に誘われて連れて行かれたその店は、日本橋のお多幸本店。どれほど美味いのか、と訝りながら卓に着いたのが間違いだったと悟ったのは、出されたおでんに箸をつけるや否やで、自分の不案内、不徳さ、謙虚さの無さをすぐさまに恥じた。

醤油と砂糖でこってり甘辛く味付けされたそのおでんは、これまでに食べて来たどんなおでんにも似ていず、強いて言えば美味い鋤焼きのようなものだ。それがこの店独特の秘伝の味なのだということは、きびきびした店の空気とともに伝わってきた。

貪るように食い進め、どの種も美味くてもはやここに日参するしかない、と一人で確信しようとしていたら、まだ美味いものがある、と友人が言う。

え?・・・これよりも更に美味いものがあるのか?!と耳を疑っているなか、「とうめし、二つ」と声を発している。

待つこと、ものの一、二分。それは出てきた。

味つけご飯に、大きなおでん豆腐が載っている。しかもおでんの出汁による汁だくである。

これから先、その味のことを書くまい。書き尽くせないほどの世界なのだ。極楽浄土というものを知り、久しぶりにあらたな味覚を満喫した宵だった。

■「とうめし」。すこぶる写真映りが悪いけれども、そういうものが実は得てして旨いという典型だ。

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by k_hankichi | 2018-04-28 12:17 | 食べ物 | Trackback | Comments(4)
“諸身分には君主を廃する力もあった。多くの場合、君主と諸身分の関係は領邦法や統治契約で定められ、それによって君主の権力は制限されていた。よって君主がこれに背いた場合、君主に抵抗することは、諸身分の正当な権利とみなされた(「抵抗権」)。そして関係改善の試みが不調に終わった場合、諸身分は君主を「暴君」とみなして排除を検討し、実際にしばしばそれに成功したのであった。”(「第二章  オーストリアの地で」より)

『ハプスブルク帝国』(岩崎周一、講談社現代新書)を読んでいると、欧州の君主制から現代までの流れには、本当に沢山の試みと見直しと改革と変化変革があったことを知る。そしてこれがいまの議会制民主主義を生み出している。

十三世紀頃の中世ヨーロッパのほうが、どこかの国の政治よりもずっと民主公平だったかもしれない。夢物語ではない。

※諸身分とは、君主と民衆との間にある在地有力者。中間的な諸勢力が、聖職者、貴族、都市といった身分ごとにまとまって構成した政治団体。

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by k_hankichi | 2018-04-27 06:28 | | Trackback | Comments(3)

幽霊は居ない

いつのことからか、夜の丁度寝る前の時間帯に、家の一室の照明が勝手に灯るようになった。そして気づかぬうちに、それはやがて消えている。

家人は、私が毎晩その部屋の照明を点けて明日の準備やら探しものをしたあと、そのまま消さずに寝室に向かっているのだと思っているらしく、点いていると消していた。

会話はこうなる。

「あなた、また電気点けっぱなしにして寝たでしょ」
「しらない」

翌日。

「あなた、また電気点けっぱなしにして寝たでしょ」
「おばけじゃない?」

さらに翌日。

「あなた、また電気点けっぱなしにして寝たでしょ」
「僕じゃない。そっちがあっちのドアをバタンと閉めたからその衝撃で点くんじゃないか?」

「あなた、また電気点けっぱなしにして寝たでしょ」
「どろぼうが入ったのかな?」

引っ越しをしてから一年以上が経ているから、家の大抵のことは片が付いていたけれど、この件だけは、ついと分からなかった。

一昨日、部屋の電気のスイッチをまじまじと眺めて見た。初めて眺めているなあと思った。

そして気づいた。

『入/切 タイマー』

えええっ!この照明、タイマー設定が出来るんかぁ!?

よく見たら、まさにあの時間になったら点灯する設定になっていて、また、或る時間になると自動で消えるようにもなっていた。照明ごときを、と侮っていた。

『ご使用前には必ず「取扱説明書」をよくお読みください。』

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by k_hankichi | 2018-04-26 06:41 | 一般 | Trackback | Comments(3)
しばらくどう考えるべきなのか迷っていた。映画『ペンタゴン・ペーパーズ』を観たあと圧倒されていたからだ。

その間に官僚と政治家を糾弾するやり取りは、はめられた、騙されたというロジックにすり替えられ、本当の悪事は何なのか、何がそうさせて、また私利私欲や利権はどのように集められて行われたかという、もともとの大きな事件から話題の中心が逸れてしまっていた。

この意味では政治家は報道機関を良いように使っている。報道機関には別の事柄にうつつを抜かさせて一大事からカモフラージュしていく作戦。

良い話を聞かせてあげるよ、と記者を食事の場に導いて私利私欲のハラスメントをする官僚もひどいもので、すぐに暴露るだろうことを臆せずにやっているから、実はこちらも政治家と結託しての演出なのかもしれないとさえ一瞬思う。

さて、映画について。舞台はアメリカのワシントンD.C.。ベトナム戦争を長くやり続け、あと少しあと少しと湯水のごとく人と武器物資を注ぎ込み続けていた(日本の先の大戦と同様に政治家たちは民衆を騙していた)。

ベトナム戦争に流れ込み、そしてそれを続けてきた政治と軍部の裏の実態を解析し、のちの世のための礎としようと軍は自ら分析レポートを纏め上げたいた。ペンタゴン・ペーパーズ。

しかしそれはもちろん政治家や軍関係者のための解析書であって、戦争を止めるという判断のためには使われていなかった。

それに目をつけた記者は、曾て働いていた政治研究所に保管されていたその分析レポートのコピーを盗み出す。

ニューヨーク・タイムズはそれを記事にする。ホワイトハウス(ニクソン政権だ)は、極めて素早く裁判を通じてそれを差し止めさせる。

同じようにレポートのコピーを入手したワシントンポストはどうするのか?

同紙は、丁度株式公開をして経営状態を安定化させたまさにその時。社長は経営を取るのか、公僕ともいえる報道機関の使命を全うしようとするのか。

正々堂々と使命を全うする、その姿勢に、とことん感銘した。素晴らしい姿勢。

だれもが本来は公僕なのだ。



■雨模様の曇天の日本の空(政官の状態の模倣)
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by k_hankichi | 2018-04-25 07:02 | 映画 | Trackback | Comments(4)
身を捨つる  人はまことに  捨つるかは
捨てぬ人こそ  捨つるなりけれ
(一遍上人)

世を捨つる  人はまことに  捨つるかは
捨てぬ人こそ  捨つるとはいふ
(西行法師)

このことがとくに沁み入る一冊だった。これを少しでも分かることで、「ひとり」の覚悟ができてくる。

ブログ友人に感謝した。『「ひとり」の哲学』(山折哲雄、新潮選書)。

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by k_hankichi | 2018-04-24 06:29 | | Trackback | Comments(2)
ハードロックからは出来るだけ離れていようと心掛けていた。第一に音楽がよく分からない。風態が馴染まない。皮ジャンパーが嫌いだ。などなど理由はあるけれども、訳わからない歌詞でがなり立てる遣り様そのものが我慢できなかった。

しかし最近毎回観ているドラマの主題歌がそのハードロックになっていて、仕方がなく受け入れる。歌詞と旋律を聴いているうちに、これは僕が退けてきた音楽とは一線を画しているようだと気付き始めた。

バンド名『人間椅子』。説明をWikiから紐解くと次のようにあった。

「ブラック・サバスを彷彿とさせる70年代風ブリティッシュ・ハードロックのサウンドに、日本語・津軽弁での歌唱、怪奇をテーマとした世界観の歌詞をのせた、独特の音楽性を特徴とする。」

主題歌のMusic Videoには、バンドメンバーの演奏の出で立ちと共に、ドラマに出演している田中泯の踊りがオーバーラップする。

奇々怪界ながらも、生きるということの意味を訴えてくる。不思議な感覚に包まれる。

今年のこのドラマ『命売ります』は三島由紀夫が原作。50年前の作品なのに、未だに色褪せない迫真さがある。

命を売る主人公・山田羽仁男が事務所を構えるビルに見覚えがあって、そこは曾てよく酒を飲みに行った場所だったから、思わずその扉を叩いてみたくなった。けれどもそれは、人の命を買い付けにいくということになるのだ、とハタと気づき、外側だけ撮影して帰ってきた。

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■主題歌『命売ります』


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by k_hankichi | 2018-04-23 07:33 | テレビ番組 | Trackback | Comments(1)

先入観が為す躊躇い

仕事柄、いろいろな国の人と会い、打ち合わせやら情報交換やら交渉をする。そのたびに先入観が邪魔をする。

たとえば次のよう。訊きたくても訊けないジレンマのなか、日々は過ぎゆく。

■ムーミン好きのひとも「レミンカイネンの帰郷」聴いてますか?

■「シヴィリ」、「シヴェリ」。では「シヴォリ」も有るのでしょうか。

■二度の大戦で国土を蹂躙されたからこそ、こんなに交渉上手なのかしら。

■いまは「収容所列島」の文学者はどう読まれていますか?

■某国が大使館の場所を移したことを、お祝いしたほうが良いのかな。

■歴史問題を小中学校でどう学びましたか。極東の我々を本当にはどう見なしていますか。

■君は演歌を好きになる、好きになる。長靴の国のあなたは。

■島流しの人々の末裔。下手なことは言えないがあなたはもしかしたら・・・。

■花札とどちらを取りますか?

■鎖国時代のお付き合いの蜜月のことはどう学んでいますか。

■ジャポニズムはあなたにとって今どう影響をしていますか。

■「アン」で名字が終わるあなたは、あの国の人ですか。

■大戦で史上最悪の罪を犯したこと、尋ねて良いのだろうか(しかしこちらもこちらで・・・)。

■アラウからアルゲリッチに繋がる線に敬服します。あなたは彼らを好きですか。

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by k_hankichi | 2018-04-22 06:35 | 社会 | Trackback | Comments(3)
それが森と雪と湖の国の叫びなのだと、一口飲んで直ぐに分かった。

フィンランドからの来人がお土産にくれたのは、コスケンコルヴァ・サルミアッキ。大麦から作ったウォッカだ。サルミアッキは塩化アンモニウムとリコリスから出来ている風味料。

アルコール度数32%のこの酒は、ほのかな甘みと鋭い香薬草の入り混じった香りで、それは薫ったことのない類い。しかも色は黒褐色。

なんなんだ!と思いながらの一口は、目の玉が飛び出るような、ゴムと金属と香草を足した味で、まるで麻酔に掛けられたかのよう。

ああ、あの北の地の森と雪と凍った湖に囲まれた凍てつく地で、少しの時間しか明るくならない一日を過ごすには、このくらいの刺激と酩酊とが必要なのだ。朝からであろうと、漆黒の夜の闇のなかでも。

サルミアッキのいざないが、春の陽射しのなか蠱惑的な気持ちにさせる。

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by k_hankichi | 2018-04-21 10:21 | | Trackback | Comments(3)