人気ブログランキング |

カテゴリ:酒( 95 )

秘密のジントニック

あまりにも素晴らしいから、誰にも教えたくないバーがある。

それは京都にある店で、四条だか五条だか、七条だかは言いたくなくなる。

そこに今宵も行った。

マスターが文人であり、もちろん酒についての造詣も桁違いだから、静かに盃を傾けてもよし、文化文芸のことを語ってもよし、時の過ぎゆくままのなかに、その移ろいを楽しむだけでも、何だか気持ちが馥郁たる感覚に包まれる。

訪れてくる客も素晴らしく、その佇まいに思わず自分の身を綺麗なもののように繕おうかと思ったりもする。

大切なバーは、大切な仲間や人とのためにとっておく。 

改めて空間時間の価値ということを認知した。

◼️お店のモニュメント(マスコット)。
c0193136_23591311.jpg

◼️マスコットを見つめて(京都のジンで作られたジントニック)。
c0193136_00001136.jpg

by k_hankichi | 2019-06-27 00:20 | | Trackback | Comments(2)

横浜に出かけた帰りに立ち寄りたくなるのは野毛という飲み屋街で、午後のまだ明るいうちから多くのお店が開いていて、何の違和感もなく黄昏前からお酒を飲める不思議な空間だ。

だから先週末にも暗黙の裡にそこに足が向いていて、何の気なしに選んだ居酒屋(「七福」のこと)でおっそろしく美味い鰻の柳川鍋などを楽しんだ。そのまま帰ることにはならないのがその界隈がもたらす雰囲気で、しらずうちに先月も足を運んだバー「In the Still」の扉を入っていた。

座ったカウンター越しにたくさんのお酒が並んでいるのはそういう店の常なのだけれど、驚くべきことにそこにはシャルトリューズが神々しくも鎮座していた。

「あっ・・・シャルトリューズ!」

思わずついて出た言葉に自分でも驚いたが、それは4月に欧州に出張したときに現地の研究者からお土産に頂いた酒だったからである。Voiron(ヴォアロン)という、グルノーブルから西に少しだけ行ったところにある地で、修道院で培われたレシピをもとに造られ続けているアルコール濃度55%の薬草系リキュールだ。緑色のボトルは8年以上の長期熟成品のVEP(Vieillissement exceptionnellrment prolongé)。リキュールの女王とも称されるそう。

しかしその味はおっそろしく甘く、自宅で一口二口喉を浸しただけでその後は僕の家の酒棚の奥の奥に押し込まれ、日の目を見るようなことはあるまいと思うようにほぼ忘れ去られようとしていた。

「こ、これをなにか美味い飲み方で飲ませてください」

マスターは、合点承知の助という顔つきで作り始める。

「グレープフルーツ果汁を加えたカクテルです」

そういって差し出されたその杯は、原形が思い出せないほど爽やかでかつ甘みは保たれた味付けで、狐につままれたかのよう。

酒には、それぞれ最高に美味い飲み方がある。

酒の奥義を一歩進んだ気がした。

※シャルトリューズ社のホームページ:https://www.chartreuse.fr/


c0193136_20160404.jpg


by k_hankichi | 2019-06-10 00:26 | | Trackback | Comments(2)

ポルトガルのワインの店がある、と連れていってもらったのは、銀座のど真ん中にあるマデイラワインだけを専門に扱ったバーだった。

マデイラ、マデイラと黙って唱えてみたが、そこはどこにあるのか、とんと見当がつかない。お店にあったパンフレットでようやくそれがイベリア半島の南西にある島だと分かった。

モロッコのカサブランカとほぼ同じ緯度にある亜熱帯の「常春の島」。日本の奄美大島とほぼ同じ大きさだというから何だか親しみが沸いてくる。僕の父方も奄美諸島の出身だからだ。

アメリカ大陸を発見したクリストファー・コロンブスが生まれ、オーストリア=ハンガリー帝国の最後の皇帝・国王カール1世が生涯を終え、そして今ではサッカーのクリスティアーノ・ロナウドが生まれた島だという。

世界を動かした人たちが、実はひっそりと静かに暮らしている。常緑の樹木に囲まれながら、そこに葡萄やらの果物の植林をし、それらが実るときだけ人々は賑やかに集まって摘み取り、そしてまた静かに時を過ごしてゆく。

そんなところで造られるワインはどこまでも甘美で、その杯を傾けているだけで現代の喧騒やら国と国の争いやら、生き方についての蘊蓄などは彼方に消えて、ただただ今ここにいることの実感が酒の余韻のなかに溶け入っていった。


c0193136_07194649.jpg


c0193136_07194660.jpg



by k_hankichi | 2019-05-31 06:52 | | Trackback | Comments(6)

洞窟で旨い酒は造られる

旨い酒というのは、密かに静かに洞窟の奥で醸造されていくのだ、ということを初めて理解した。百聞は一見にしかず、とはこのことだ。

欧州における酒造りを真似ながら新大陸でワインが作られ始めたのは、ニューヨーク州が始めだと聞いたけれど、その造り方が西海岸まで伝えられて、本当にそこで葡萄ができ始めたのは二十世紀になるかならないかの時期らしい。

一年中温暖で乾いた土地に果物を育成していくのは一筋縄ではなかったろう。陽当たりのよい丘を選んで開墾し、一株一株手で植えて、ぶ厚いケアをしていかねばならない。

気候が良いだけに果実が出来はじめたら直ぐに熟れてしまう。素早く判断して手際良く摘み取ることを課せられた人たち。

洞窟の奥は予想を越えて深くてひんやりとしていて、しかしそこには人々の血と汗の温もりが残されていた。


c0193136_00183933.jpg


by k_hankichi | 2019-05-18 00:03 | | Trackback | Comments(0)

酩酊天国への途

南カリフォルニアにくると、勧められるのはメキシコ料理。珍しさもあいまって、次々に手を出して口に運んでしまう。タコス、チリ、サルサ、チョリソー。挽き肉の味付けを競ったとすれば、メキシカンは世界ランキングで一二を争うのではないか。

う、うまい・・・。あたまの中がそれにまつわる単語で溢れてゆく。

アメリカ料理には閉口するのだけれど、民族や地域が違うだけでこうまで食事が違うのか。

そして飲み物。勧められるのはもちろんテキーラで、蒸留してまもないフレッシュグレード(レポサド)、一年ほど瓶熟成したミディアムグレード(アネホ)、そして三年ほと樽で熟成したエイジドグレード(エクストラ・ドライアネホ)。それぞれを飲み比べていく。

なるほど熟成品は喉ごしがスムーズでコクがある。

などと思いながら盃を重ねていくと、あっという間に酩酊状態になっていることに気づく。何杯飲んだのだろうか。

そろそろ吉田健一(吉田類かもしれない)の世界に突入です。


c0193136_06521184.jpg

c0193136_06521279.jpg


by k_hankichi | 2019-05-15 06:42 | | Trackback | Comments(4)

さるぽぽから酒を飲む

冬の出張の長旅で困るのは、駅の売店や車内販売で買える酒が冷たいことだ。遠い地にひとり旅する心さみしさに加えて身体も冷えてしまうからなおさら遣る瀬無い。

そんななか先週、売り子さんに常温のお酒はないかどうか尋ねたら、ありますよの返事。

松竹梅と久寿玉、どちらにします?

と訊かれて、いまさら松竹梅ではなかろう、と後者を選んだ。岐阜県・飛騨高山の酒だ。→http://www.kusudama.co.jp/kura/index.html

一口呑んでみただけで、それは身体ととても馴染み、その自然さが控えめなこともあってクイクイと飲み進めてしまった。舌先は甘酸っぱく後味は辛いから酒の肴にも合う。心身はきわめて暖かくなる。

瓶のデザインもかわいい。さるぽぽという、飛騨地方の人形の図柄。猿の赤ちゃんという意味だそうだ。

ウィキペディアは次のように書いてある。

“庚申信仰によると、人間の体には三尸(さんし)という虫が住んでおり、人の罪を監視している。60日一度の庚申の日に宿主の人間が眠ると体を抜け出し、天帝に罪を報告しに行く。そのため、三尸が出ていけないように庚申の日は徹夜で過ごし、また三尸の天敵である猿を模した人形(「身代わり猿」「くくり猿」など)を家の軒先に吊るしておくことで災難を避けるという風習があった。”

あらまあ、おっそろしい。そのさるぽぽから酒を飲んでしまった。いや待て、それが身体で四六時中見張ってくれることになるのだから、これからは三尸(さんし)に罪を報じられることもないということか。

だんだん分からなくなってきました。


c0193136_07591455.jpg


by k_hankichi | 2019-02-17 07:38 | | Trackback | Comments(2)

一枚の写真


仕事の後に懇親会が設けられ、初めて会った人たちであっても苦労話やら難題、それを繋いでいくための経験や人脈、はたまたそれぞれの人の趣味趣向などを交わしていくと、なんだか自分も集団のなかで生きているような気分になってゆく。

酒が好きな人が見つかれば、二次会、三次会にも繰り出すが、そのまま散会となると、途端に手持ち無沙汰になるのが困ったことで、だから自然と路地を探しつつとおりを彷徨う。街角オタク地図オタクたがら迷子になることは無くて面白みに欠けるけれど、それでも新たな路地を発見して今度足を踏み入れてみようと思う。

今週の寄り道は、友人から教えて貰った「文壇バー」(そう呼んでいるだけで本当の名前は別にある)。店内の照明は暗くて、客はぼそぼそと囁やくように話をしている。内容はフランスの近代哲学のはなしだったり、学究者たちの仮説の違いだったり、そうかと思えばふらりと立ち寄った旅人(ヨオロッパ人が何故か多い)の問わず語りだったりもする。マスターは黙ってそれに耳を傾けている。

そこに居るとどうしてか生きた心地がついてきて、その空間と時間にいつまでも身を浸していたくなる。

後ろ髪を引かれながらジントニックの二杯ぐらいを飲んだあとに引き上げるのが通というものなので、そうしてこの夜も過ぎ去っていった。

一枚の写真だけが残っていて、遠い彼方に忘れ物をしてしまったような気分。「しん」と音が聴こえてきそうな、ちょっぴりの寂しさと心地よさが入り混じったような思い出だ。



c0193136_08084281.jpg


by k_hankichi | 2019-01-18 07:36 | | Trackback | Comments(3)

イノシシ年用のビールを飲んでるよという連絡を友達かもらって、羨ましくて探したが見つからなかった。そんななか手に入れたのはイノシシ年用のウイスキー。

新春バージョンは有るのを知っていたが干支柄のやつがあるとは気づかなかった。

干支とともに暦が自分に還ってきた重みをゆっくりじっくりと味わいたい。そう思いながら、またあっという間に空けてしまうだろうなあ。



■イノシシ年バージョンのウイスキー。
c0193136_10140997.jpg


■先週の旅行中に気になった雑誌の宣伝(買っておけば良かったなあ)。
c0193136_10150353.jpg



by k_hankichi | 2019-01-12 10:05 | | Trackback | Comments(6)

「それは飲まないです、もっと強い酒をください。」

と言うたびに怪訝な顔をされる。

「アメリカの映画ではウイスキーを瓶からラッパ飲みするのが普通じゃないのか、おいおいどうしちゃったの、強い酒をくれ」

と言いたいけれど、英語で啖呵を切れる訳じゃないから、控えめな言い方になる。

「どんなの?」

「スコッチ、ダブルで。」

しかし、アメリカ人よ、ほんとにいつからこんなに軽いものばかり飲むようになったのさ。スーパーマーケットまでそればっがり陳列して、そりゃとても綺麗だけれども、極東人から見たって全然迫力がないよ。

そう思って「強い酒を揃えて頑張ってくださいね」、と小さく声を掛けようとして、これまた押し留めてしまった夜だった。



c0193136_08443147.jpg


by k_hankichi | 2018-11-07 08:37 | | Trackback | Comments(4)

ドライシェリーを求めて

お酒で何が一番好きかとよく訊かれる。その度に、うーん、と悩む。

いずれの酒もそれぞれに・・・、と答えたいところだが、最近はウイスキーやジンにも増してシェリー酒が美味いと思う。『ローマの休日』のアン王女だったらこう言うかもしれない。

Each, in its own way, was unforgettable. It would be difficult to — Sherry! By all means, sherry. I will cherish my taste here in memory as long as I live.

そんなこんなで、週末に買い物に出かけてこんなことになっている。

たいていの酒屋はシェリー酒の品揃えが少なくて困り、それだけをいろいろと悩みたい僕の気持ちは、またしても空振りに終わった。

c0193136_13473208.jpg


by k_hankichi | 2018-09-03 00:38 | | Trackback | Comments(2)