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by はんきち

カテゴリ:クラシック音楽( 629 )

からりとした空気の涼しい週末に、ふと頭を掠めた旋律はドヴォルザークの交響曲第8番ト長調。それも第3楽章だった。

無性に聴きたくなって、CDの音盤棚を探してもどうしても見つからない。それもそうだろう、交響曲の8番などここ数十年は聴いていなかったから。

まてよ、と探し始めて普段は見ない書棚のほうをアクセスしてみたら、ああ、やっぱり。ようやく出てきました8番さん。

ターンテーブルに載せて(LPレコードだった)聴き始めた。それを楽しんでいた日々のことが蘇ってきた。

プルーノ・ワルター指揮、ニューヨークフィルハーモニックによる演奏(音盤: CBS/SONY SOCF124)。

この弾けるような舞曲風の旋律は、秋を迎えようと心が踊るそのさまのよう。

活き活きと弾けるようなエネルギーとハリに満ちた音魂。

もうすぐそこに秋がある。

※録音は1947年12月28日。年末押し迫ってのドヴォルザークとは何だか不思議だ。



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by k_hankichi | 2018-08-19 12:12 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(2)

セヴラックの休暇

夏休み。仕事のことはあらかた忘れて、朝方からお昼まで冷房の効いた部屋で楽しむのは、デオダ・ド・セヴラックのピアノ曲集。

友人から教わるまでこんな作曲家が居るなんて、全く知らなかった。そして聴いてみて、自分の浅はかさに愕然とした。

3枚組になったその全集は、アルド・チッコリーニによるもの。

今日は、今日の自分そのものに合っている『休暇の日々から』という題名の曲集が入った音盤を聴いている。

第1集はシューマンへの、そして第2集はショパンへのノスタルジーが散りばめられている。

暑さのなかの一服の清涼剤とはこの気分のことを言うのだ。

■曲目
<第1集>
1. シューマンへの祈り 
2. 祖母様が撫でてくれる
3. ちいさなお隣さんたちが訪ねてくる
4. 教会のスイス人に扮したトト 
5. ミミは侯爵夫人の扮装をする
6. 公園でのロンド
7. 古いオルゴールが聴こえるとき
8. ロマンティックなワルツ
<第2集(未完)>
9ショパンの泉
10. 鳩たちの水盤
11. 二人の騎兵 〜時代遅れのスタイルの危険のないカノン〜

12. 「ロマンティックなワルツ」
13. 「夾竹桃のもとで(カタロニアの謝肉祭の夕べ)」
■録音
1968.12月〜1977.7月、Salle Wagram, Paris
■音盤
Warner Music France (Erato) 0724357237222

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by k_hankichi | 2018-08-15 10:54 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(1)
ロシアの若い女性ヴァイオリニスト、アレクサンドラ ・サム(Alexandra Soumm)という人がグリーグのヴァイオリンソナタを全曲弾いた音盤を手に入れて、真夏の夜に聴き入った。第3番はよく聴くことがあったけれど、1番2番は知らなかったから、それも良い機会だった。

第1番はノルウェーの海を臨んだ丘の上から吹きそよぐ風を受けているような作品。とても純朴でしかも第2楽章は民族舞踊の趣きがあり爽快だ。第3楽章もカッコ良い。

第2番はピアノ抒情曲のような趣き。途中からヴァイオリンとよく絡み合うようになって、それは北欧の田舎道を、あちらこちらと右に左に歩いたり、またいきなり駆け出したりするような按配だ。

第3番はもちろん珠玉で、このヴァイオリンソナタはあまりにも心地よいから、だれにも聴かせずに自分だけのものにしたくなる。

静かに、大切にもっていたい曲集になった。

■曲目
グリーグ:ヴァイオリンソナタ
・第1番ヘ長調、作品8
・第2番ト長調、作品13
・第3番ハ短調、作品45
■演奏
アレクサンドラ ・サム(vn), ダヴィッド・カドゥッシュ(of)
■収録
2010.2.1-4, イエスキリスト教会、ベルリン
■音盤
Claves Records50-1002

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by k_hankichi | 2018-08-04 21:16 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(2)
名高い弾き手でもバッハアルバムを出すのは初めて、ということがあるのを知ったのはルドルフ・ブッフビンダーの音盤に出くわしたからだったのだけれど、実はこちらも同じだった。

小山実稚恵による『ゴルトベルク変奏曲』(ソニーミュージック SICC19032)。収録: 2017.2.7-10, 於 軽井沢大賀ホール。

彼女は第30変奏のことをライナーノーツで次のように書いている。

“第1変奏から始まったバッハの歩みが、第29変奏でクライマックスを迎え、最後に確固たる終和音が鳴り響く。その残響のさらに残りの香の中で、遠くから、一人の歌声が聞こえてくる。そして、それが二人の歌になり、三人になり近づいてくる。最後は民衆の大合唱が響き渡り、大きな感動となって心に迫ってくるのだ。”

なるほど、数多の楽曲に通じたピアニストにしてこれほどの気持ちとともに弾いていることに感銘した。

この変奏の「クォドリベット」(Quodlibet)は、好きなように、俗謡の重ね歌い、いう意味。

規律と秩序、幾何と構築だけが世界なのではない、どのように振舞っても良いんだよ、あなたがたの自由なんだよ、とバッハは語りかけていたのだ。

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by k_hankichi | 2018-07-24 00:09 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(4)
聴いたことが無い音魂が連なり行くその形跡のなかに有ったものは「いまここにあることの意義」のようなものだった。それは乾いているようで乾いておらず、枯淡のようでいて活きていて、いや逆に幼児のように純粋だった。

ルドルフ・ブッフビンダー。祖先は製本屋だったのだろうその彼が紡ぎ出すバッハは、素朴と正直と真摯と静けさ、そして徹頭徹尾の優しさが共存している。

バッハの音楽さえあれば良い、と思うことがたびたびあって、それはいつもこの音楽家が内包する、何百年経ても古くならない新しさを発見したときで、この、音盤を聴いた晩もそうだ。

夢心地になるはずの真夏の夜は、透明にしんと美しく静かに光っていた。

■曲目(オール・バッハ)
・パルティータ 第1番 変ロ長調 BWV825
・パルティータ 第2番 ハ短調 BWV826
・イギリス組曲 第3番 ト短調 BWV808
■収録
2014.9.24-25、ドレスデン、ルカ教会
■音盤
ソニーミュージック SICC 30256

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by k_hankichi | 2018-07-17 06:49 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(3)
この夏のさまざまな天災、そして灼熱の毎日に、哀しみと無力感で全ての気持ちが萎えていた。

そんなとき、このアルバムを聴き始めた。「エレジー」。

出だしから癒されていった。

ヘンデルかと思うような響きのなかに、憧憬と少しばかりの焦り、そして永遠のこころが込められている。

レイナルド・アーン(Reynaldo Hahn
)。ベネズエラで生まれフランスで活躍した近代作曲家だそうだ。『A Chloris』という作品。

希求ということを、まだまだ捨ててはいけない、と思った。

■収録曲
1. Reynaldo Hahn  “À Chloris”    
2. Jules Massenet  “Élégie”
3. Gabriel Fauré „Élégie” op. 24
4. Franz Liszt  “Es muß ein Wunderbares sein” S 314
5. Richard Georg Strauss “Allerseelen” op. 10 nr 8
6. Richard Georg Strauss “Ruhe, meine Seele!” op. 27 nr 1
7. Richard Georg Strauss “Cäcilie” op. 27 nr 2
8. Richard Georg Strauss “Heimliche Aufforderung” op. 27 nr 3
9. Richard Georg Strauss “Morgen” op. 27 nr 4
10. Richard Georg Strauss “Befreit” op. 39 nr 4
11. Gustav Mahler “Ich bin der Welt abhanden gekommen”
12. Henryk Mikołaj Górecki „Do Matki” op. 3 Trzy pieśni na głos średni
13. Henryk Mikołaj Górecki „Jakiż to dzwon grobowy” op. 3 Trzy pieśni na głos średni
14. Fryderyk Chopin  „Smutna rzeka” op. 74 nr 3 (WN39)
15. Edward Pałłasz „Matki człowieczej lament”
16. Pyotr Il'yich Tchaikovsky “Nie wier moj drug” op. 6 nr 1 (Do Not Believe, My Friend)
17. Pyotr Il'yich Tchaikovsky “Niet tolka tot kto znal” op. 6 nr 6 (None But The Lonely Hearts)
■演奏
Magdalena Kulig (mezzo soprano)
Magdalena Blum (piano)
Stanislaw Firiej (cello)
■収録
2011.12.7,10,11 at Akademia Muzyczna w Katowicach
■音盤
MUZA Polskie Nagrania, PNCD 1427



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by k_hankichi | 2018-07-14 19:49 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(3)
それは遠く記憶の果てからだんだんと近づいてきて聴こえてきて、そして自分を包み込んで、そうしているうちにまた雲の先の遙かなる未来へと消え去っていくような演奏だった。ボロディン弦楽四重奏団によるラヴェル/ドビッシーの弦楽四重奏曲集の音盤。

収録は1950年だから、楽団結成初期のもの(Vn: Rostislav Dubinsky, Yaroslav Alexandrov, Va: Dmitri Shebalin, Vc: Valentin Berlinsky)。

この演奏を聴いているとロシアの人たちの柔らかなそして迸る感性というものを知る。社会主義体制のなかにあって、よくぞこんなに敏感でかつ優しい表現ができたものだと不思議な気持ちにもなる。

これまで聴いてきたどのクァルテットよりも、馥郁たる香りが漂っていて、そして、あまりにも懐かしい気持ちになる。そしていま、世知辛く小さなことにもくよくよして生きていることが、なんだかとても取るにたらない小さなことなのだと自然と気づかせてくれる。

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by k_hankichi | 2018-07-09 00:28 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(3)
まるっきり聴いたことがないような、摩訶不思議な感覚に包まれた。友人から知ったトーマス・ヘンゲルブロックという指揮者とフライブルク・バロック・オーケストラ。バルタザール=ノイマン合唱団による演奏である。

僕はそれがどのような演奏なのか分からぬまま、思い切って彼がドイツ・ハルモニア・ムンディで録音した音盤集を買い求めていた。

もちろんバッハのロ短調ミサ曲から聴き始めたが、不安は一瞬にして消え去った。一瞬にして。

バッハの音楽を耳にして、ぞわぞわと新鮮さと瑞々しさというものが迫ってきた若い頃の思い出が蘇った。しかもそれは此れまでに聴いたどんなバッハとも似通っておらず、ロ短調ミサ曲にしても、あれえ?こんな曲だったのかなおかしいなあ、でもああこの瑞々しさとはいったいなんなの、あら何という心地よさ、という感じなのだ。

かといって、それは奇を衒ったものではなく、表現するとすれば、真摯な静謐な誓いとともに発した音魂と言葉。

このグループの他の音盤を少しずつ聴いていきたい。生きるということへの新鮮な気づきが隠されているのだと思うと、この歳になっても心躍るものがある。

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by k_hankichi | 2018-07-08 08:56 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(3)
    風邪からの回復途上のなか、ダニエル・オッテンザマーによるクラリネット曲集に文字通り癒されている。肩肘を張るであるとか虚勢を張るという世界とは一切無縁な演奏だ。

音楽は、シューベルトとモーツァルトが主体で、だから尚更、これ以上脱力できないほどに揺蕩う。

    オッテンザマーは31歳という若さながらウィーンフィルの首席奏者。急逝した父親エルンストもウィーンフィルの首席、弟のアンドレアスもベルリンフィルの首席というクラリネット一家だそう。

こんな人たちが隣家に住んでいたならば、漏れ聞こえてくる音楽だけでも毎晩観る夢も爽やかな優しいものになるだろう。

■音盤
ソニークラシカル SICC-30249
■演奏
ポール・グッドウィン指揮/ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団
■収録
2014.5.17-18、モーツァルテウム大ホール、ザルツブルク
2014.5.21-22、サラ・プリンシパル、パンプローナ、バルアルテ他
■曲目
  1. シューベルト:セレナード D.957の4[歌曲集「白鳥の歌」]
  2. 同: 君はわが憩い D.776
  3. 同: 「ミツバチ」作品13の9
  4. モーツァルト: クラリネット協奏曲 イ長調 K.622 I Allegro
  5. クラリネット協奏曲 イ長調 K.622 II Adagio
  6. クラリネット協奏曲 イ長調 K.622 III Rondo.Allegro
  7. ベートーヴェン:モーツァルトの歌劇「ドン・ジョヴァンニ」より「お手をどうぞ」による変奏曲 WoO.28
  8. ラナー: シュタイアー舞曲 作品165
  9. シュトラウス: ポルカ「休暇旅行で」 作品133
  10. ファルバッハ: 電光石火のポルカ 作品295
  11. アンコール(即興)
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by k_hankichi | 2018-05-16 06:45 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(2)
ようやく音楽を受け付けてくれる頭になってきて、ブダペスト弦楽四重奏団によるドビュッシー/ラヴェルの弦楽四重奏曲を聴き始めた。

この演奏はいずれも1957年の収録。それを見て一度買うのを止めてしまったのだが、友人の薦め(それと例の坂本龍一のテレビ番組での語り)に触発されて買い求めていた。

さてドビュッシー。これまでイタリア弦楽四重奏団のせせらぎのように流麗な演奏が僕の好みだったが、ブダペストは動きに満ちている。演奏者たちは掛け合う。互いの肩の先を小さく上下させたり傾けながら、互いの旋律を見せつけ絡み合う。それに酔いしれている光景がまざまざと浮かび上がる。そうして第1、第2楽章が終わる。

第3楽章は融和だ。肩肘張っていた過去を顧みてこれからの行く末に静かに眼差しを向ける。相対するのではなく同じ向きを向いて協調してゆく。「これからは共に歩んでいこう、ゆっくりとだけれどね、お互いに、ようやっとでもね」というような声が聞こえてきそうだ。あまたあるドビュッシーのなかでも珠玉の演奏だと思う。

第4楽章。深まりゆく静けさのなかから、一転して過去の情動とエネルギーに満ちた日々が蘇っていく。弦と弦は競り合うかのようだが、それは以前のような対峙ではなく融和、そしてそれを超えての解脱を目指す。

「ノスタルジー」ということの意味が言葉なく伝わってくるような演奏だった。

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by k_hankichi | 2018-05-14 06:39 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(2)