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カテゴリ:クラシック音楽( 681 )

再びキース・ジャレット

ああ、なんと心落ち着き癒される響きなんだ。深々と息を吸ってゆっくりとはくと美しく心地よいものが自分の周りに漂い満たされている。

キース・ジャレットのチェンバロ、キム・カシュカシャンのヴィオラによる、バッハのヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタ集だ。

キースは次のように語っている。

「バッハの音楽が美しいのは、彼が構造を考えていたからではありません。バッハの音楽に接すると分かりますが、バッハはいつも前もって考えていたわけではない。音楽が終わったときに完璧であるためにはいま何が自然かということを考えていた場合が多いのです。だから、構造を作っていたわけではなく、音楽を作っていたのです」

キースのチェンバロは極めて軽やかで草原の上を爽やかに滑ってゆく風のよう。キムによるヴィオラもとても上手で美しい。

チェロで弾かれることも多いこの曲をヴィオラで弾くことで、なおさら明るさが増しているように思う。

解説書に収められた写真は、キムが指を使った口笛を吹き、キースは鳥が羽ばたくさまを手で表現している不思議な構図。

蒼穹の大空の彼方まで響いてゆく音楽だ。

◼️曲目
・J. S. Bach: ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタ 第1番 ト長調 BWV1027
・同 第2番 ニ長調 BWV1028
・同 第3番 ト短調 BWV1029
◼️収録
1991年9月、Cavelight Studio、ニュージャージー
◼️音盤
ポリドール POCC1023




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by k_hankichi | 2019-05-21 00:11 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(2)
「出張にむかう機内で観た聴いた」と始まる記事を何回も上げてきたけれとも、今回もそれで、しかもこれまた度肝を抜かれた演奏だった。

ジョージ・セルがチェコ・フィルを指揮してトボルザークの交響曲第八番を演奏したもの(1969年)。

僕がこれまで聞いてきたどのような演奏とも異なる。ヴァツラフ・ノイマンの民族趣溢れるものでもなく、ズデニック・コシュラーの流れるような旋律でもなく、ブルーノ・ワルターの微笑みと優しさとも全く違う。

生々しく生きる渇望と、デモーニッシュなほどギラギラした唸りのようなものがここから迸っている。

有名な第三楽章になると、少々の喜びが混じってくるが、凛とした律動を忘れていない。

こんな曲だったっけ?

と何度も思うような、まるで別格なものなのだ。CDも買い求めて聴きなおさねば、と深く吐息をついた。



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by k_hankichi | 2019-05-13 08:04 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(3)
こういう演奏があるのならばもっともつと早く聴いておくべきだった。プルーノ・ワルターとは対極にある指揮・演奏スタイルだ。

サー・ジョン・バルビローリによるブラームスの交響曲全集。序曲集とハイドンヴァリエーションも入っている。

ゆったりとした運びのなか、どのパセージも疎かにしない。なんという神々しさなんだろう。

ブラームスが自らハミングしているのではないかと思うような風情だ。それぞれの曲で、ああ~っ、といちいち感銘するので、書き散らかしそうになってしまうのだけれど、この感覚を表そうとするとこうだ。

・傲慢とは無縁。
・いざ共に進まん。
・寄り添うのではなく肩を組む。
・ひとつひとつの美しさを噛み締める。
・人に諭すのではなく、共感の表明。
・胸襟を開く。
・細工のない芸術。
・小賢しさが無い。
・生きる喜びの謳歌。

新品3枚組で1090円(+税金)。素晴らしく品位高い演奏をこんなに安価に手に入れて良いの?と思ったけれど、ヤルビーだとかドダメルだとかが金銭感覚を狂わせているだけであって、世の中の罪滅ぼしのために神様が褒美をくれたものなのだと思うことにした。

ありがとう、タワーレコード!



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by k_hankichi | 2019-05-12 00:18 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(3)
連休の最後にまとめ買いした音盤の一枚を聴いて、まさに椅子から転げ落ちて床にだらしなくすわりこんでしまった。

パトリシア・コパチンスカヤのヴァイオリン、クルレンツィス指揮、ムジカエテルナによるチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲だ。

友人がつい先ごろ生で聴いて、ぶったまげたやつだとおもいながら、まあ、そんなことはあるまい、と油断して音盤を再生し始めたからなおさらその衝撃はでかかった。

チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲という、昔から慣れ親しんだ曲だと思って臨んではならない。これは、まるで異次元の曲なのだ。

自由闊達、無限至極、天衣無縫、驚天動地。

そんな四字熟語を使わないと、この感動は言い表せない。

スーパーカリフラジリスティックエクスピアリ ドーシャス (Supercalifragilisticexpialidocious)!

あるいはこんな言い方だろうか。

まだまだ生き甲斐があるなあ、と思うことしきりだった。

※追伸:
音盤のジャケットは、カップリングされているストラヴィンスキーの『結婚』にあやかっての、クルレンツィスとコパチンスカヤによる結婚式の演出写真。徹底的にやる音楽家たちだ。

◼️収録
2014.4.27-5.1, P. I. Tchaikovsky State Opera and Ballet Theatre, Perm (Tchaikovsky)
2013.10.24, 25 &27 (Stravinsky)
◼️音盤
独Sony Music Entertainment 88875190402

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by k_hankichi | 2019-05-09 00:10 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(4)
「オフェーリアか!とうとうそこまでやってしまったかい、カティア!」と声にでそうになった。そしてちょっと周囲に人が居ないか視線を気にしつつドキドキしながら音盤を買い求めていた。

家に帰ってさっそくライナーノーツの冊子を開いてみる(音楽よりも冊子が気になる音盤は初めてだ)。

うっ、あっ!ええ~っ!

と声まではでないけれとも、期待通りの部分ともう少しお願いしますよぉ、という部分とがあって、ペラペラとページを送ったり、ひっくり返して逆さにしたり、透かして見ようとしたりすること暫し。

そして、ああこれはグラビアアイドル写真集じゃあなかったんだ、シューベルトたった、と深い吐息をつく。

カティアにはシューベルトはまだ早いんじゃね?と思いつつ、聴き始めてみると、おいおい、なかなかどうして、これはイケる。

遅いテンポのなかに、カティアが活きている。彼女のシューベルトへの想いが伝わってくる。

僕の大好きな最後のピアノソナタ。そして4つの即興曲。大きく吐息をつけるほどの満足感がそこにあった。

◼️曲目
1. シューベルト: ピアノソナタ第21番変ロ長調D 960
2. 同: 4つの即興曲 D 899
3. 同: セレナーデ(『白鳥の歌』D 957 第4曲、リスト編曲)
◼️演奏
カティア・ブニアティシヴィリ
◼️収録
Markus-Sittikus-Saal, Hohenems, Austria, 2018.12.19-23
◼️音盤
ソニーミュージック(ドイツ) 19075841202


◼️音盤ジャケット(中身は買ってのお楽しみです)
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◼️トレイラー動画





by k_hankichi | 2019-05-08 00:19 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(2)
いつのまにか5月連休も残りわずかとなっている。ことさら遠出は控えて日々ゆるゆるとした時間を過ごしていて、そういう意味ではとても気持ちがゆったりとした。

さらに今日は家のなかのことだけれども嬉しい出来事もあり、ああ、こうやって家人たちは少しずつ成長していくのだなあと思う。こういう感覚を感慨無量というのかもしれない。

ちょうどこのごろは、バッハのゴルトベルク変奏曲を管弦楽八重奏でアレンジされたものを昼夜とわず聴いていて、その雰囲気がまさに今日の気持ちにぴったりと合っていることにも気づく。

これは深遠さとは一線を画する、天から地上に舞い降りてきて世俗と戯れてくれるゴルトベルクだ。

人間世界のなかにあるさまざまな喜怒哀楽が、この編曲の曲想のなかに織り込まれていて、バッハがすぐさま隣で、「それでいいんだよ」と語りかけてくれているかのよう。

春の日は静かにかつ優しく過ぎゆく。

◼️演奏: Octuor de France
◼️編曲: Marcel Bitsch
◼️収録: 2003年、l'auditorium du Concervatoire d'Aulnay-sous-Bois
◼️音盤: 仏カリオペ CAL9334


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by k_hankichi | 2019-05-04 18:48 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(2)
令和の初めの日は素晴らしい晴れに恵まれ、そしてまた例利さとしっかとした決意とに満ちた朝見の儀をテレビ中継で観て、なおさら清々しい気持ちに溢れた。

朝に聴いているのは、バッハのフルートソナタ全集。フランス・ブリュッヘン、グスタフ・レオンハルト、アンナー・ビルスマによる演奏。

1975年の収録とは思えないほど溌剌鮮明かつ適度な抑制が利いた、心落ち着く演奏だ。

今日この日にまさに相応しい。これから新しい時代がはじまる予感と期待でいっぱいだ。


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by k_hankichi | 2019-05-01 11:36 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(3)
旅先で買い求めた音盤にはその街の佇まいが記憶されていて、不思議な感興がもたらされる。

フランスの田舎のほうの街で買ったのはバッハのピアノ協奏曲全集。マレイ・ペライアが弾きながら指揮をした音盤だ。

この曲のそれぞれは、もともと別の楽器のために作られていたものだから、そのオリジナルの曲を知っているといきなり懐かしい友達が四つ角から飛び出てきて出くわしたときの驚きに似たものが呼び起こされる。

そして「あっ君、もしかして、あのときのヴァイオリンだった人ね?」とか、「オーボエ吹いてなかった?」とか、「お前ブランデンブルクじゃね?」とか訊ねたくなる。

とてもとても明るくてポカポカと心が暖かくなる、それでいて変な華美さや度を越したエグさが無い、素直な演奏の音盤。長く親しめるだろうことこの上ない。

それにしても、ジャケットのペライア氏の笑顔は何とも気さく。とことんたのしんで弾いている雰囲気が満載だ。

■曲目
J.S.Bach: ピアノ協奏曲第1番〜第7番(BWV1052〜1058)
■演奏
マレイ・ペライア(pf, 指揮), アカデミー・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ
■収録
2000.5.14-16(#1, 2, 4, 5)、2001.5.12-13(#3, 6, 7)、Air Studio, Lyndhurst Hall, London
■音盤
ソニークラシカル SK89245, SK89690


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by k_hankichi | 2019-04-23 06:43 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(4)
小学生のころ、毎月配本される「少年少女 世界の文学」が楽しみだった。そして「おおかみ王ロボ」というシートンの作品を読んだのもその頃たったと思う。

中身は忘れてしまったけれど、読んでいるときと読み終えたあとの、切なくて哀しい感覚を思い出させたのは、エレーヌ・グリモーのベートーヴェンのアルバムを買い求めたからだ。

マルタ・アルゲリッチが六歳のときにクラウデォ・アラウが弾くのを聴いて、髪の毛が根本から逆立つかというほど強く感動をし、それ以来この曲を断固として公開で弾こうとせず、「きっと、触れてはいけないほど神聖な何か。わたしだったら、きっと、舞台でそのまま死んでしまうだろうと思うくらい」と言った、そのベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番ト長調作品58だ。

この演奏は、もしアルゲリッチが弾いたとしたらかくあるのでは、と思うようなとっても溌剌でかつ機微に溢れたものだった。

そして聴きながらライナーノーツを読んでいると必ず狼と戯れるグリモーの写真が出てきて、なんとも不思議な気持ちに捉われる。

深淵なる世界と野生の動物への想いとが交わるところから、生きとし生けるものの宿命と儚さと、夢と自信と、そして万物に対して向ける優しい眼差しとでもいうものか。

ベートーヴェンのピアノソナタの第30番ホ長調作品109と第31番変イ長調作品110も、ゆったりとしたテンポのなかに、ああこんなに美しい旋律だったんだなあという発見がそこかしこにある。

誠に稀有な一枚だと思う。

■演奏:エレーヌ・グリモー(ピアノ)、ニューヨーク・フィルハーモニック、指揮:クルト・マズア
■録音:1999年、ニューヨーク(ライヴ=協奏曲)
■音盤:Teldec 3984-26869-2



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by k_hankichi | 2019-04-21 20:51 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(2)
ドビュッシーのシランクス、ビリティス、レントより遅く、そしてフルートソナタやらが入っているアルバムを聴いている。

まるで夢の中から呼びかけてくるような心地よさで、ついつい聴いているほうも微睡んでゆく。

その先には冥界があるのかもしれない。とすら思うほど妖艶な気配に満ちていることにも気づく。

春の日の朝から昼下がりまでにかけて、まさしく相応しい、ほの暖かくて心地よい音楽だ。


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by k_hankichi | 2019-04-16 08:05 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(0)

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