カテゴリ:街角・風物( 439 )

そろそろ追想無断章だ

坪内祐三さんの著書を読んでいたからだろう、昨日は天気も良かったから神保町に無性に行きたくなり、古書街クルージングに挑んだ。

最初に見つけたのは、文芸路線にしておけば良かったのに不穏当記事で休刊となった『新潮45』の原節子特集のムック本「原節子のすべて」。幻の映画『七色の花』のDVDまで付録している。

値段は少し高かったが件の事件で再出版はないかもしれないから希少本だ。おおっ、と声ならぬ声を上げて隠すようにして買い求める。

数軒の店先を覗いたあと、小宮山書店のガレージセールに向かう。おっ、今日は小説の美本、それもまだ数年内のものが多いぞ。どこぞの作家さんか出版関係者が放出したのかしらん。

3冊500円のいつもの価格だから安心して9冊を買い求める。ビニール袋を二重にしてもらって運ぶことにするが、指が切れそうに重い。

そしていつもの中古レコード屋さんへ。「お久しぶりです」と互いにほぼ同時に声を発する。しばしの歓談も気をそぞろに目は棚に向きズリズリと横移動を開始。

あったあった、お目当てのメロス弦楽四重奏団の音盤。友人が惚れ込んでいるやつだ。そして土曜日に観た是枝監督の映画で掛かっていたジュリアード弦楽四重奏団を探す。おねえさんが手伝ってくれて、数枚をあっという間にレジ横に並べてくれる。懐かしのスメタナ弦楽四重奏団のやつも比較候補にしてくれて至れり尽くせりだ。

店内のBGMはベートーヴェンの序曲集。「レオノーレ第3番」は、やけに音が良い。インテンポだけれども、伸びやかでしっかりドッシリしている。金管の溌剌さと美しさはえもいえぬ。快活というのはこういうことをいうのだ。ダニエル・ハーディングなのかなあ、そういう音盤が出たのかなあ。つらつら考える。

おねえさんが教えてくれる。

「クレンペラーの英EMI盤なの。このシリーズ音が良いっていう人たちいるの。確かに良さそうだけれど、やっぱりそうかしらねえ。」
「確かにめちゃくちゃ音、いいですね。あと、普通入ってない曲が入ってる。買っちゃおうかな?」

店内に入って耳にしたときから、ああっこりゃ凄いぞと、買うのを決めていたのだけれど、裏をみたらドイツでのプレスで、ますます目が開く。言わないでさり気なく買い求める。

そんなこんなの巡回を済ませ、家に帰って自分の書棚の原節子の段を眺めていたら。あれぇ・・・?新潮45のムック本があるではないか。狐につままれた気持ち。

このほかにも米澤穂信の『追想五断章』が被っている。あららん、もうボケだ、とヤケのやん八。

それ以外は持っていない本や音盤が手に入ったから良しとしよう。無理やり自分を納得させる。

家人に言ったら、「『FUJITA』の映画もそうだったじゃない」と一蹴。

そうだった。意気揚々と観に行ったが、あれ?これどこかでもうすでに観たと、狐が出てくる終わりの頃になって気づいたことがあった。

追想無断章。だんだんと危なくなってきています。


■家の書棚にあったやつと並べて反省する(つもり)。
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■昼飯は、タレかつ丼屋で野菜タレかつ丼を食べる。ヘルシーで美味かった。これは「初めて」食べました。確かに。
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by k_hankichi | 2018-10-22 06:41 | 街角・風物 | Trackback | Comments(2)

市川にあった映画撮影所

こんなに身近なところに映画撮影所が嘗て有ったとは。学生時代に、自宅から駅まで毎日往復した路のすぐ脇だった。

朝日キネマ・市川撮影所は、市川の真間の丘の中腹にあたるなだらかな斜面と、そしてその裾野の平らな場所に拡がっていた。昭和3年ごろのことだ。映画会社は昭和10年代前半で活動を停止しているらしいが、事業が成功して拡大していれば、松竹・蒲田や東宝・砧スタジオのようになっていたかもしれない。

現在は、住宅地やら芳澤ガーデンギャラリーというアート関連施設が立地している辺りだろう。

もはや何の片鱗も残されていなくても、何だか胸の奥が温かくなった。

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by k_hankichi | 2018-09-24 00:29 | 街角・風物 | Trackback | Comments(5)

大熊猫が午睡をむさぼる

秋の連休の中日は、120分待ちの大行列の末に、大熊猫を眺めた。立ち止まる余裕も殆ど無かったけれど、僕らのことは何処吹く風という按配で怠惰に午睡をむさぼる。

ああ、こいつらは大丈夫だ。安泰だ。

そう分かって安堵した。かたやホッキョク熊は精神を病んでいたから尚更だ(岩山の前を繰り返し繰り返し同じルートで行きつ戻りつ歩く)。

それにしても秋の動物園は、相手よりも人間の数が圧倒する。オアシスに水を求めて集まる様相を呈している。

「あいつら何を考えとるんだろね、暑さがちょいとぶり返して怠いのに、何が楽しいんだろね。シャンシャン[香香]まねするんでないよ、寝たふりしとき。」(シンシン[真真])

声が聞こえた。

外にでてみたら、暑いなか、また人間たちがゾロゾロと隊列組んで何やら踊っていてビックリした。(しまった、まだ動物の気持ちでいた。)

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by k_hankichi | 2018-09-17 00:16 | 街角・風物 | Trackback | Comments(4)

屋根裏部屋の生活

屋根裏部屋といえば、ヨーロッパの貧乏作家や貧乏画家がなけなしの金をはたいて漸く暮らし、そしてそのなかから驚くような作品が生まれるところだと相場が決まっていた。

そんな部屋を憧れていたからかもしれない。僕に充てがわれたのはまさにそういうところ。嬉しいようなちょっと情けないような複雑な気持ちに包まれる。

古いものを大切にする人々の工夫。そのことを身を以て体験した。

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by k_hankichi | 2018-08-11 06:15 | 街角・風物 | Trackback | Comments(3)

静謐という言葉は自然のなかにもあった

ターナーはこんな風景を心の底の記憶に留めながら、それとは対照的な都会の風景、街角、蒸気機関車、港の日の入りを描いていたのだと思った。

車窓から眺める英国の田園風景は、どこまでもどこまでも何事もなく広がっている。羊や牛、馬が草原にいても、それは全く静かで、首を垂れているものは音もなく食んでいる。

静謐という言葉は自然のなかにもあるのだと分かった。

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by k_hankichi | 2018-08-10 15:59 | 街角・風物 | Trackback | Comments(3)

まなこ見開き術に掛かる

西洋の島国は東洋の島国と共通のところがある、と思っているのは我々だけかと思っていたら、「同じ島国だから仲良くしようぜ、大陸のやつらとは違うからさ!」と声を掛けられて、嬉しさと意外な気持ちが入り混じりながら、その相手を見上げた。

その男は、そういうような同意を求めたり強調しようとするときに、カッ、と眼を開いてじっとこちらを見つめる。

人間のまなこはこんなにも大きく開けるのか、というほどで、「眼見開き訓練」というものを子供のときから通過して今に至っているのに違いない。

然して意思が有る無いに関わらず、ついつい導かれるようにして嬉しそうに頷いてしまう。

東洋だとかアフリカだとかオセアニアなどに数多有る国々も、そうして遠い西洋の島国に憧憬を持ち続ける。

「北風と太陽」の童話でも太陽が勝つわけだけれど、大英帝国が培った遠隔支配・懐柔術の片鱗を味わった。


■「さよなら、ロンドン! また来るよ!」。そう小さく呟いて次の目的地に向かった。
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by k_hankichi | 2018-08-09 14:18 | 街角・風物 | Trackback | Comments(4)

『日の名残り』の人々と対峙する

その次の打ち合わせに出てきたのは、映画『日の名残り』の執事長役のアンソニー・ホプキンスとダーリントン卿役のジェームス・フォックス、に似た容姿と振る舞いをする人たちだった。

専門的な話をするようでいて、しかし何を考えているのか雲を掴むようで何も分からない。心のなかが読めない。深い哲学があるのか、それとも素朴だけの人なのか。

これでは、ミス・ケントン役のエマ・トンプソンに愛想をつかれるのも仕方がない。

市井の人々が、そのまま映画に出ている人のように感じられて、嬉しいやら、と迷うやら。

英国はどこまでも奥深い。

■明治時代の銀座(観たことはないけど)を彷彿させる街並み。
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by k_hankichi | 2018-08-08 06:44 | 街角・風物 | Trackback | Comments(2)

映画俳優似の人々に気持ちが乱れる

三人を目の前にしての打ち合わせは気持ちを集中させるのに苦慮した。時差ボケがあったからではない。次世代技術開発がテーマだったのに、どうしてもその相手の顔つきと喋り方が気になって、上の空になりがちになったのだ。

それぞれは映画俳優にそっくりだった。

マネジメントディレクターは、ヒュー・グラントに似ていて、喋りかたと仕草、ウィットの入れ方までがそのもの。カッコいいなあと思い、『ノッティングヒルの恋人』とかの映画のシーンが思い浮かぶ。

技術リーダーはローレンス・オリビエが監督・主演した『ハムレット』のなかに出てきたホレイショ役の俳優。議論の最中に、さて何という名前だっけ、と考え始めたりして困った。

実務エンジニアはまさにリチャード・ウィドマーク。彼の母親はイギリス人だったはずだと思いながら、ニヒルな語り口は変わらないね、と声を掛けたくなった(もちろん別人だからそんなことはできない)。

そういう邪念をどうにかこうにか振り払い、議論に集中できるようになったのは小一時間も過ぎたころだった。

英国は映画のようにカッコよく語る人々の宝庫だ。


■晩にはパプを訪れ吉田健一の酒を楽しんだ。
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by k_hankichi | 2018-08-07 14:39 | 街角・風物 | Trackback | Comments(3)

花火に覚醒した長い夜

絢爛豪華なる佇まいと腹の底が共鳴する大音響の一時間半に、精神が覚醒し続けたからかもしれない。またその夜に何気なく開いた冊子に、以前世話になった人の記事が出ていてそれが意外な迄に温厚かつ殊勝に読めたからかもしれない。

疲れた脚を休めたいと思って早めに床についたが、まんじりともできぬまま様々なことが頭を駆け抜け、始末に負えなかった。

この先幾度この花火を見るだろうか。人生の岐路に際して自分の選択は正しかったのか。

どうしてか太宰治の『冬の花火』を思い出し、長い夜が続いた。

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by k_hankichi | 2018-07-30 06:53 | 街角・風物 | Trackback | Comments(4)

町家の路地の先にあるもの

西に東に、また西にと動き回っていたあとで、ふと、あの日の夜はどうしていたのだったか?と考えても何の記憶も蘇ってこないことがある。しかし、だ。最近の有り余る性能を内包する電話機は、そんな失われた記憶を手繰る糸口になる。

そこにはいくつかの写真が記録されていた。記録されている順番から察しても、それは確実に最近のあの一日の最期のほうで訪れた場所への路地だと思う。しかしそれはどこなのか。いくら思案しても浮かんでこない。

まるで遠いむかしの端っこの、甘いのか苦いのか分からぬ狭間のような、そして掴めそうで掴めない光景に似ている。

ひゅるひゅると逃げていく蒟蒻のような、この細い路地の先には何があったのか。それは思い出してはいけないところなのかもしれない。

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by k_hankichi | 2018-07-04 07:04 | 街角・風物 | Trackback | Comments(4)


音楽、小説、そして酒を愛する方々との空間です


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