2018年 02月 06日 ( 1 )

少しずつ暖かくなってきた。凝縮していた空気、水分、そしてありとあらゆる物質が、その歪みを解放する準備をしている。立春を境にして寡黙に、でもしっかりと方向をもって動き始めようとしている。

そんなときに聴くのがぴったりだったのが、ブラームスの間奏曲集の音盤だった。そしてそれはしかも新しい出会いと発見の場になった。

グレン・グールドの演奏がありさえすれば事足りるとずっと思っていたこの曲集。アルカディ・ヴォロドスは、静かに自分の心の声と過去と現在を結びつけ、そして、まだ少しはある未来につなげまでゆく。

「6つの小品 作品118」の2曲目は、昨年のTBSドラマ『ごめん、愛してる』で、主人公(長瀬智也)の生みの親のピアニスト(大竹しのぶ)が、子供を思い弾く曲だ。大竹は長瀬が実の息子だと知らない。付き人によって死産だったと騙されているからだ。そして長瀬は孤児院に預けられた。

大きくなってからは韓国に渡りヤクザのポディーガードを務めていたが、しかしとある抗争で負った銃弾が元で、余命幾ばくもなくなる。そんなとき、生みの親が居ることを情報屋から教えられ、ひょんなことから大竹の家の運転手の職を得る。

亡き子を思う親の哀しさ。親を慕いたくても近づけない哀しさ。その相克の気持ちをこの曲が伴走する。

ブラームスはこの作品118に、何も具体的に示さない「小品」と命名することに頑なにこだわったという。そしてその第3曲目にバラード、5曲目にロマンスと副題をつけ、それ以外は間奏曲とした。

題名がないからこそ、そのときそのときの弾き手と聴き手の想いが沿ってくるのかもしれない。

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by k_hankichi | 2018-02-06 07:07 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(2)