2018年 02月 04日 ( 1 )

“自分にはファッションセンスがある。整理整頓がうまい。要領がいい。対人的なコミュニケーションが得意だ。お金持ちである。人生の勝者だ。そういうスタンスから書かれるジャンルの本がある。いわゆる自己啓発本である。ファッションセンスがない人から着こなしを学ぼうとか、借金だらけの人に投資のコツをレクチャーしてもらおうとは、誰も思わないから当然といえば当然だ。
その逆のジャンルも存在する。例えば、短歌である。作者と同一視されがちな作中の<私>は、ほとんどの場合、自己啓発本の作者像を反転したような駄目な姿をしている。実際には、お洒落でお金持ちの歌人だっているはずだが、そのような<私>が作中にそのまま現れることはまずない。順風満帆な人生の勝者は共感されにくいからだ。従って、短歌の本を読むことには、不器用で繊細な負け犬の呟きを楽しむ、という一面がある。”(「極上の負け犬感」より)

こんなふうに、ああそうだよなあ、と感じることが満載の、爽やかな息吹に包まれる自然体の書評集だった。『きっとあの人は眠っているんだよ  穂村弘の読書日記』(穂村弘、河出書房新社)。

小説、歌集から漫画まで、本当に幅広く読まれていて舌を巻く。漫画についての造詣の深さは最早僕とは別世界に近くて、読みたいけれども逆に強烈に躊躇う気持ちになる。あのレベルまで到達はしないだろうから遠ざかっておこう、ということだ。

穂村さんの評した作品のなかから、また幾つかのものを買い求めるだろう。

世界はさまざまな切り口から広がっていく。

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by k_hankichi | 2018-02-04 07:00 | | Trackback | Comments(5)