2018年 02月 01日 ( 1 )

ウィーンの世紀末を得意とする、ちょっと難解な学者さんだなあと思いながら、いくつかの著作を読んできたことを思い出した。ドイツ文学者の池内紀さんのことである。

僕にとっては少し高尚すぎると思っていた彼が書き上げたのは、最初で最後の自伝的回想録というもの。『記憶の海辺  一つの同時代史』(青土社)。

どんなものか分からなかったけれども、思い切って買い求めて読み進めたら、とても素晴らしかった。そしてまた、池内さんという人は、学者としての姿から離れると、とても自然体で生活感覚豊かに日々を送っているということが分かった。

びっくしたのは、高橋健二に対する視点。僕は全く知らなかったのだが、ナチス・ドイツに同調し、ユダヤ系文学者の作品は隅に追いやり無視するようになったということ。そしてそればかりか、戦後は、何の自己批判の弁も残さず生涯を終えたという。

トーマス・マンなどの名訳を残しながら、どうして反ユダヤに同調できたのか。

人間の弱さというものは底無しなのだと気付いて、深く吐息をついた。

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by k_hankichi | 2018-02-01 21:59 | | Trackback | Comments(3)