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2014年 09月 11日 ( 1 )

関口から神楽坂

こんな不可思議な小説があるのか、と思った。『幻影の星』(白石一文、文春文庫)。

ぼくらの毎日は、過ぎさった時間の積み重ねであり、そしてその時間の大切さを知る。

未来も同じように大切な時間でもあり、自分たちがこの世から去ったあとも別の誰か(人類の子孫)がこの世を担ってゆく。

担ってゆくことが担保されているかのようで、しかしそれは微かな希望に近い約束によって繋がっているだけだ。

今この世にいる人々は100年後には確実に生きていない、と言われてみて初めてその微かな事象を理解する。

文京区関口の東京カテドラルに、「ルルドの泉」のレプリカがあることが小説に記されていて、自分以外のあらゆるものすべては「レプリカ」でしかない、と気づくところでクライマックスに達する。

レプリカから成り立っている幻影の星が地球であって、自分たちの存在というものが単なるコピーでしかないと気づいたとき、過去や現在、未来という時間の流れなどないということを悟る。

長崎の諫早や文京区関口や新宿区神楽坂など、自分の足跡をたどったかのような展開に驚き、作家は僕のレプリカなのかもしれないと幻暈にみまわれた。

幻影の星 (文春文庫)

白石 一文 / 文藝春秋

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by k_hankichi | 2014-09-11 01:02 | | Trackback | Comments(4)