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2011年 02月 09日 ( 1 )

今朝はみぞれ混じりの冷たい雨。空気は和らぐことなく凍てつく。ミラノの街にもこんな雨が降るかな。石畳に音もなく雨が吸い込まれているだろうな。この本を読むと、遠く欧州の街や風景、人々の情景を想い遣るようになるだろう。

『霧のむこうに住みたい』(須賀敦子、河出書房新社)。これまで未収録だった彼女のエッセイを中心にまとめられ、書評集や日記などを除いてはおそらく最後の作品集だそうだ。

それぞれのエッセイは五、六ページしかない短さで、ああもう終わってしまうのかと名残惜しい。しかし次の小篇に移るとまた、彼女の別の視点や景色に出会えて嬉しくなる。

表題の小篇の出だしはこうだ。“そこへ行ったことはたしかなのに、ある細部、たとえば土地の名を忘れてしまったために、どこ、と正確にいうことができず、まるで夢で見ただけのような土地がある。私がそこをおとずれたのは、イタリア中部、ウンプリア地方の県庁所在地ペルージャに、ひと夏滞在したときのことだった。”

読み終えるたびに、ふーっと静かに溜息がでる。そして訪れたことはなくても、彼女の目や感覚、ことばを通じてそれらの土地や風情を知ることは、なにかたとえようのない貴重なものに触れたような気持ちをもたらすのだ。

霧のむこうに住みたい

須賀 敦子 / 河出書房新社

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by k_hankichi | 2011-02-09 07:15 | | Trackback | Comments(2)

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