センチメンタルになったりシリアスな気分になったり、かと思ったら楽天的になったりで、自分の軸がどこにあるのか分からなくなる。かといって哲学に没頭して突き詰めて考え抜く力があるかといえばまるで力も意気地もないから始末に終えない。
そして今は食い意地に支配されている。
週末に食べた担々麺のことを思い出していた。ああ、あれをまた食べたい。そういう食い意地に満ち溢れている。
ラーメンやらタンメン、五目麺やらはあまり好んで食べない僕だけれど、担々麺だけは望んで食べる。敢えて食べに行ったりもする。
とはいえ理想的な担々麺である下北沢の「天手鞠」が閉店してしまった以上、わくわくしながら食べに行く店はもはや無かった。
そんなときに目の前に現れたのが松戸の「
四川担々麺 いぶし銀」。
ここは、胡麻の種類(白胡麻か黒胡麻か)、辛みの段階、痺れの段階、そして汁無しか否かを選択するシステム。無愛想な職人気質の親父さんの機敏で無駄のない動きを目で追いながら、出来上がりを待つ。
白胡麻版を僕が、黒胡麻版を連れ合いが食べ始める。
うむうむ。しっかりした味だ。そして濃厚な味に喉が鳴る。辛みはあるが甘味も感じる。細麺が具合がよく、胡麻が螺旋を描くように絡み付いてくるのをいとおしく思う。
しかして黒胡麻はどうなのよ?疑問が沸く。
右を見やると、隣人は黙々と食べ続けている。
ん?何事か?
黒胡麻が旨いのか?でもさ、担々麺ていうのは白胡麻が基本だろ?黒かい、そりゃ生半可じゃあないのか?
自分の軸について、疑念が微かに沸いた。自信をもって白を選んで食している自分の軸が微かに揺れた。哲学ではなく食い意地の軸。
どれどれ、僕に一口その黒胡麻版を味見させてよ、まあどんな味になっとるかなあ。担々麺奉行は偉そうに一口運ぶ。
「すると、見よ。神殿の幕が上から下まで真っ二つに裂けた。そして、地が揺れ動き、岩が裂けた。」
どうして黒胡麻版がメニューにあるのかその理由が痺れるほど分かった。
◼️黒胡麻担々麺
◼️白胡麻担々麺