僅か一日足らずのサンクトペテルブルクだったけれども、必ずまた来るよ、と心のなかで呟いた。
パリが花の都だとすれば、ここは威光と感傷の都かもしれない。圧倒される感覚は、かならず「美」というものに包まれていて、舗道の一枚一枚の敷石がそれを知っている。
街のそこかしこに、なかに入ってみたい素晴らしい建物があり、心の奥がぎゅーっとなるほどの憧憬を覚える。
夜のエルミタージュ美術館は、その佇まいだけで芸術。石畳に照りはえるそれに陶然となる。
マリインスキー劇場は、なかで繰り広げられているだろう舞踏と音楽を想像する。劇場内の模型を眺めているだけで、着飾った貴婦人たちのむせかえるような香りと囁きが聴こえてくる。
巨大な聖イサアク大聖堂にはロシア正教の峻厳さと不動さが滲み出している。
ネヴア川はあまりにも巨大でとうとうとしていて、セーヌ川やドナウ川が子供騙しに近いことを悟る。
大帝が支配し君臨し続け、威光に輝く地。世界を駆け巡ったバルチック艦隊の母港。900日間攻め続けたナチスドイツも匙を投げた頑迷さ。
この街に身を隠すかの如くに、住んでみたい、と切に思った。
■エルミタージュ美術館
■マリインスキー劇場
■聖イサアク大聖堂