一日の早い時間に都心を歩くとそこは昼間の喧騒を離れた別世界で、その景色は静謐と呼んだほうが近い気がした。たとえ世のなかが世知辛くともどんなに理不尽であろうとも、橙色の空の美しさだけは変わらずに僕らを見守ってくれる気がする。
電車が走っていてもそれは無音のうちに滑っているような気さえしてくるのは、やはりそれが一日の始まりの時間だからで、それが毎日繰り返して訪れる夜明けでも、たとえようもなく大切に思えてくる。
それが世界の繰り返し。地球というものの上に生きているものたちに、均等に与えられるもの。
掛け替えのないもの。その名前を朝という。