正月、久しぶりに『早春』を観た。デジタルリマスター版のものが昨年テレビ放映されていて録画したっきりにしていたものだ。こんなに長い作品だったっけ?(2時間24分)と思ったし、青春謳歌ものだと思い込んでいたからその内容には正直びっくりした。
若い夫(池部良)が友人仲間の若い女(岸恵子)と浮気して、そこから逃れられなくて苦しむ。妻役の淡島千景は知らぬふりをしながら嫉妬に苦しむ。
途中、社会人先輩の笠智衆から、「夫婦っていうもんは、色々あっても、そうやってしっかりとしてゆくんだ」というようなふうに諭され、まるで『晩春』のなかで、京都の宿屋で娘に諭すシーンの先であるかのような錯覚に陥る。
しっかりと観たのは多分20年ほど前だから、そのときには現実感覚が無かったものが、ようやく理解できるようになったということかもしれない。
小津映画は一生楽しめると思った。
■映画の最初のほうで出てくる蒲田駅のシーン。奥が省線、手前が東急目蒲線だ。