仕事の専門書であろうともだんだんと頭に入らなくなってくる年頃なのだけれど、小説や音楽の本は大丈夫だと思っていた。その前提が崩れてきていることを体感して愕然とした。『音盤考現学』(片山杜秀、アルテスパブリッシング)。
これは10年まえに、第18回吉田秀和賞と第30回サントリー学芸賞を受賞したものだそうで、そうと分かっていても九割がたが難しくて頭にも入らず心にも響かない。それは著者ではなく僕のほうに原因があって、それというのも十中八九の曲は聴いたこともない作品だったからだ。
博学ぶりだけでなくて、僕の10倍100倍は音楽を聴いてきたのだろうということが、ひしひしと伝わってくる。
専門家というものの奥義を知って襟を正すだけでなく、口を「ん」の形にして神妙になるしかない。
これから辞典の一つとして書棚に置かれる一冊となった。