『本日記』を読む
2018年 11月 12日坪内祐三の『本日記』を出張の途中に読了。改めて、どれを読んでも面白いなあ、と思う。
どうしてなのか?を考えてみた。
①筋金入りの本マニア
・古本の極め方に共鳴。もちろん彼のレベルとは、僕は桁が二つ低いけれども。新刊にも敏感でそのバランス感に感心する。
②順番への固執度
・きっかけや由縁、ものごとの成り立ち、歴史や背景に執心する。但しアスペルガーまではいかなくて、揉めそうなときはあっさり放置する具合が良い。
③全集やシリーズを愛する
・マニアならではの拘り。同じものが二冊になってもそれは誰かにあげればいいやとあっさりしていて心地よい。
④酒の気配
・気配などという甘いものではないことは重々承知している。本についての日記のなかでは可能な限り記述を控える謙虚さが好きだ。
⑤気持ちの素直な発露
・一日の出来事をしっかりと書いているだけだけれど、それでも物語になっている。つまり心情が滲み出た良質なエッセイになっているのだ。
⑥色恋へのあっさりした感じ
・「文ちゃん」ひとすじさが良い。もちろん様々な邪念や横槍が入ることもあろうが、そこは省かれているから読者は要らぬ心配をしなくてすむ。
⑦捨てぜりふの快活さ
・悪い奴らは切って捨てる、水戸黄門のドラマを観ているかのような感覚だ。政治家もこのくらい闊達さがなくっちゃね。
⑧得したらあからさまに喜ぶ
・安くて得した気分を表すとき、小中学生的な開け広げ度合い。そのあからさまさが良い。
⑨趣味の組み合わせ具合
・文学以外に映画、プロレス、大相撲、酒なども極めていて、なんだか余裕ある生き方だよなあ、と羨望。
⑩経路の順路
地図が頭に入っていて古本屋や飲食店を巡る効率さが素晴らしい。ただし乗り換えの際の地下道やら上下関係は弱いところも見せていて完璧ではない結果も示したりする。
とまあ、つらつら思いつくままに書いていると、こりゃなんだかラブレターみたいだなあ。
