はちゃめちゃさは気に入った。『転生! 太宰治』(佐藤友哉、星海社)。副題も付いている。「転生して、すみません」。
玉川上水に入水自殺した太宰が生きて帰ってきた物語だ。語り口はだから徹底的に彼そのもので、その知性と支離滅裂さが一体となった言葉は堂に行っている。
三鷹のとある一家によって介抱されたかと思えば、すぐにまた心中を企てる。再び助かったら助かったで、恩を感じもせず開き直る。尊大さと卑屈さと、整然と錯乱が入り混じった我儘がそこにいる。
志賀直哉に対しての恨みと、馬鹿にした語りは面白く、まさに生きていたらそう言ったろうというもの。
そして物語は、新たに芥川賞を取ろうとする企てに発展していく(やりざまはネタバレになるので書かない)。
『帰ってきたヒトラー』というドイツ映画が少し前にあったけれども、それに匹敵する通俗さに満ちている。
小説としてのレベルを問うべきものではなく、しかしこのような作品がこれまで出なかったことに存在意義があるだろう。
上手いこと見つけて狙ったものだと、そのことに感心した。