前掲の『川と掘割 “20の跡”を辿る江戸東京歴史散歩』のなかにあった三吉橋は本当に美しいと思っていたら、現在もこの橋はあって、川が流れていたところは首都高速が走っているとある。なあんだ、頻繁に通過していたところなんだ、と分かり、でもまだ現在の地上からはそこを眺めたことはないから、次の東京街角探検のときに必ず訪れたいと思った。
どこから撮影したものなのだろうと少し地図を調べたら、その橋のたもとは中央区役所。なるほど東京の真ん中を司る役場の前だから、なおさらあの美しく広い三叉路橋を設ける意義があったのだと再び合点した。
写真をさらに仔細に眺めていたら、遠方には大きな建物が二つ。川の流れる方向から思案して日本橋かと目星をつけたかが高島屋は昭和5年にはあの大きさには建っていないよう。
なるほどもっと近くなのだなと、解析技師の本領発揮でさらに調べ入る。結局、中央遠方は銀座松屋百貨店、その左の4階建ては星製薬本社ビルと分かった。
星製薬は星一が創業。長男の星新一も一時期社長を務めたのち、小説家として大成した。僕が小説を濫読する契機の一つに読みやすいショートショートシリーズがあり、今に繋がっている。
写真が撮られたころには星新一も生まれていて、しかしまだ幼少で本のことなど考えていなかったはず。彼がその後に作品を書くようになって今の僕があり、今の本好きがあるから掘割の本まで読んでいる。つながるつながる摩訶不思議。
だからなんなんだと言われるだろうけれども、こういう繋がりにうふふと感銘したりするのが本読みの醍醐味なんだよだなあ。