こんな題名の本が有ったらいいのに・・・『いまいちの絵』
『いまいちの絵』と読めて、あっと声が出て手に取った。中身を見て、題名と違うことを知って大層がっかりした。
いまいち、いま一つ足りない絵のことかと思っていたら、古今東西の名画についての本だったからだ。何と紛らわしい。人を騙すのも程がある。
『いちまいの絵』(原田マハ、集英社新書)を、そう何度も思いながら読み終えた。
そうは言っても、なかには感銘する絵があって、それはジョット・ディ・ボンドーネによる『聖フランチェスコの伝説』だった。
中学一年生のときの英語の教科書(東京書籍のNew Horizon)に、この画家ジョットに道で出会ったチマブーエが、「I am Cimabue, a painter.」と自己紹介するチャプターが有ったことを思い出したから、懐かしかねがね、興味を以て眺めた。
さてこの絵。何よりも暗鬱である。清貧の聖人が、自分の廻りに集まってきた小鳥たちに説教をする構図だそうだが、僕には無法図にみえる。
原田さんは、次のように紹介している。
“私の兄弟である小鳥たちよ、神を賛美しなさい。なぜなら神は、お前たちを羽毛で包み、飛ぶための翼を授けたのだから・・・と、フランチェスコのあたたかな声までが聞こえてくるようだ。泣けてくるほど美しい場面を、ジョットは大聖堂の壁に永遠に刻んだ。じっとみつめるうちに、その奇跡に感謝したくなる。”
うー、そうか。実物を観なければ、この感覚は分かりそうもない。この壁画があるというアッシジの教会をいつか訪れなければ。
実物と写真に乖離があって誤解されたりする作品もあるし、意図や構図が分かりにくかったり、間違った記載をしていたり、画竜点睛を欠いている絵もある。そういう「いまいちの絵」を集めた評論本があってもいい。