トネッティによる肩肘張らぬバッハの無伴奏

銀座のCDショップに立ち寄ったならば、必ず眺めるコーナーがある。スペシャルセールというワゴン棚だ。ロシアのメロディア盤やら名も知らない音楽会社による音盤が並ぶ。30%引きから半額程度になっているから財布に優しい。そして発見がある。

先週は、オーストラリア放送(Australian Broadcast Corpration、オーストリアではない)のものを見つけた。バッハの無伴奏ヴァイオリンソナタ&パルティータだったから、しばし考え込んでしまった。

演奏はリチャード・トネッティ(Ricnard Tognetti)という知らない音楽家。しかしそのジャケットはとても美しく、カール・ズスケの名盤(Berlin Classics BC14929)を彷彿させる。あの心の内側に入り込んでいくような按配の雰囲気とは少し違って、ヌーヴェル・ヴァーグの映画のワンシーンのよう。使用楽器の記載もありGiovanni Battista Guadagnini, Parma 1759とある。わからないけれども、なにかがありそうな感じもする。

躊躇していると、分からないものは買わないほうがよいと耳元で囁く悪魔がいて、一度店内から外に出た。出てはみたものの、そこでバッハが呼び返した。

目覚めよと呼ぶ声す、というわけではないのだけれど、結局いま、朝に夕べに聴いている。

実に自然体で、しかし凝り固まったような精神性とは一線を画している。肩肘が張らない。しかし弛緩したり投げやりではない。図に乗っていることはなく、だから生への躍動を押し付けるものでもない。

そこには、中年男が念じるような、しぶとく生きる希求がある。酸いも甘いも見分けたうえでの生きざまだ。ブログ友達が、こないだジャン・ギャバンのことを言っていたのだけれど、そういう感じだ。嫌味はまったくない。

このバッハは自分に重なる。重ねていくと未来が繋がるような気がして、だから実に気楽に聴き入っている。小田和正の唄を聴くかのような気分でバッハを聴く。まだまだ聴いていくだろう。

■曲目:J. S. Bach 無伴奏ヴァイオリンソナタ&パルティータ BWV1001~1006
■演奏:Richard Tognetti
■録音:2004.7月&12月、Eugine Gossens Hall of Australian Broadcasting Corporations's Utimo Centre.
■音盤:ABC 4768051

Wikiで調べてみたら、この音盤はオーストラリアのアワードを連続して獲得したなかの一枚だと知った。(His recordings of all of Bach's works for violin, including the concerti with the ACO, the accompanied sonatas and the solo sonatas and partitas, won the 2006, 2007 and 2008 Fine Arts ARIA Award for Best Classical Album. )

■Youtubeにも演奏がアップされていた。→https://youtu.be/OkoKyQuiLO8

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Commented by maru33340 at 2017-08-22 05:37
実に自然な演奏なり。
これみよがしな自己主張とは無縁で、一見ぶっきらぼうにさえ見えるのに味わいがある。
こういう人に僕もなりたい。
Commented by k_hankichi at 2017-08-22 06:52
maruさん、そうですよね。あまたあるヴァイオリニストたちのなかでも際立っている。
Commented by Oyo- at 2017-08-22 09:33 x
たとえ演奏者がテクニックに優れていなくても心に沁みる演奏ってありますね。バッハの曲そのものがいかように(ジャズであろうとボーカルであろうと)演奏されようと曲想そのものが素晴らしい^^
Commented by k_hankichi at 2017-08-22 19:32
おようさん、はい、そう思います。
by k_hankichi | 2017-08-22 00:37 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(4)