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by はんきち

手触り感の一冊・・・『アノニム』

ブログ友人が読まれたと聞き、やにわに僕も買い求めて読了。『アノニム』(原田マハ、角川書店)。

アートの持つ力、世界を変えていく底力について、この作品はとても清涼な風とともに伝えてくれた。

ひとりのアーティストが次のように皆に対して語るところでは、ちょっと鳥肌がたつほどの爽快感が得られる。

“おれたちひとりひとりは、確かに世界の片隅のちっぽけな人間だ。
だけど、おれが、そして君たちが新しい表現を生み出さないと、世界中に伝搬する波を作れないと、誰が言うことができるだろう?
おれたちには何もない、だからこそ、おれたちにはすべてがある。おれたちは可能性のかたまりなんだ。
いまこそ、叫ぼう。一緒に進もう。そして生き抜こう。
きっと、おれたちの目の前で、世界へのドアが開くはずだ!”
(「Saturday October 7 12:00PM」より)

絵を売り買いするオークションは、いわば経済行為の極地のような競りの世界。その実態に対して屹立するかのごとく存在するのが芸術という創造、創作行為。物欲そして自己満足を希求する経済世界と、芸術という生を希求する精神的な世界は、その起源からして対立している構図なわけで、極論すると悪と善、という次元まで到達しうる。

しかしその一見二律背反しているところから、全く予想だにしなかった解が得られるのだ、というこの小説の落としどころが、憎らしいほどに爽やか。

読了してカバーを外してみると、本の表表紙と裏表紙、そして背までが一連で繋がった1枚の絵で、それはジャクソン・ポロックの「Nubmer 1A」。油彩画のカンバス地の凹凸感をそのまま浮き出させている凝った装丁。改めてここで僕は唸り声をあげた。

究極の暑気払いだった。

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by k_hankichi | 2017-07-22 11:40 | | Trackback | Comments(2)
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Commented by Oyo- at 2017-07-24 21:04 x
お読みになられたのですね^^ 内容忘れるくらいの連日の蒸し暑さではんきちさんの記述でハッと思い出しています(*^_^*)
Commented by k_hankichi at 2017-07-24 21:17
おようさん、ご紹介ありがとうございました。爽やかでした!