弾丸出張は半島へ繰り出した。昨日は韓国南部の慶尚南道(キョンサンナムド)の昌原(チャンウォン)で仕事。夜になって食事をしていると、先方のかたが、「ここは桜が有名なのです」という。「そうなのですね、日本も桜が満開ですよ」、と話をしていた。
帰る頃になって、宿泊先まで車で送ってもらうことになった。街の雰囲気は横浜の下町のような感じで、とても親近感が湧く。ハングルをもっと勉強しておけばよかったと思ったりする。
宿は近いはずなのに、車はどんどん走っていく。海沿いを走っていたのに何故か山中に入ってゆく。いったいどこに行くのだろう、と思っているうちに、再び市街になり車は到着した。
目の前に広がっているのは、満開の桜の並木。川沿いにずらりと植わっている。なんとそこは、同じ市にある鎮海(チネ)区。余佐川(ヨザチョン)だった。毎年この時期に「軍港祭(グナンジェ)」という祭りが開催されるということで、ちょうどその最頂点の日にあたっていたのだ。
桜の品種は、済州道が原産の王桜(ワンポッコッナム)。ソメイヨシノに極めて似ている白に近い薄ピンク色。アジアの島国でも、大陸から突き出した半島でも、美しさの基準はおなじなのだ、と思うと同時に、人と人、国と国、そしてそこにある心と心の見えない繋がりを感じた。
そして思いもかけぬ夜桜の夢幻に酔いしれた。