『skmt 坂本龍一とは誰か』・・・視点を様々に動かしながら挑戦する男
平積みになっていたので思わず買い求めて一気読みしてしまった。『skmt 坂本龍一とは誰か』(坂本龍一、後藤繁雄、ちくま文庫)。
「ああ、いいなあ・・・」と思ったところを抜粋しておく。
「グレン・グールドが弾いたブラームスの「インテルメッツオ」。」(「020 旅にもっていくものひとつ」より)
「僕にとって、音楽の美の基準のX軸とY軸は、ドビュッシーとバッハだと思う。」(「035 満たされないから」より)
「僕にとっての一番のプライオリティは、「その一瞬の響き」なんだよ。」(「050 僕の音楽の単位」より)
「このところ「フーガの技法」「音楽の捧げもの」」を聴いている。やはり一音一音、耳を傾けさせる。そうか!食事と同じで、究極のものにしか耳が反応しなくなっているのか!?」(「日記から (1997年2月7日)」より)
「つくりながらインスピレイションの「素」にするもの。行き詰ったりする時、白紙から何か始める時、skmtがすること、それは例えば、カルティエ=ブレッソンの写真を見ること。あるいは、ピアノの練習の代わりに、スタッフに頼んで譜面をたくさん買ってきてもらって弾くこと。彼は、その楽譜の中から、バッハの『マタイ受難曲』を弾く。「ああなんて美しい、本当に好きなんだ」って言いながら弾く。」(「149 マタイ受難曲」より)
「フランスはやっぱり、ローマ帝国内の後進国だからさ、詩に関しては難しいんじゃないかな。時間的に千年以上遅れて花咲いた文化でしょう。だから何重にもねじれてるもの。僕らはフランス文化がヨーロッパの中心だって思いがちだけど、そうじゃない。そこから詩に出会えるかな?」(「202 詩のためのランダムなメモ」より)
「僕が特に好きなのは、バルトークが自分の息子のために作曲した『ミクロコスモス』っていう練習曲集。すごくいいんだよ、それが。そう。小宇宙。」(「224 子供のための音楽」より)
視点をさまざまに動かしながら自己を触発啓発し、創造に挑戦し続ける男だと思った。