映画『あん』(
http://an-movie.com/)を三番館で観た。木々の葉の音、風の音にも生きる喜びを感じる。そういう、「生」の大切さ、愛しさの気持ちに溢れる作品だった。
どら焼き屋「どら春」の雇われ店長の千太郎(永瀬正敏)のもとに、求人広告を見て徳江さん(樹木希林)という老女が訪れた。彼女は、餡を作りたいという。
それまで千太郎は、既製品の餡を使っていたのだけれど、徳江さんの餡を一口食べてその素晴らしさに驚嘆し、彼女を雇うことにする。
そこから繰り広げられるのは、餡の素晴らしさによって、どら焼きの人気が人づてに高まり、行列のできるお店にまでなっていく。そして・・・。ドラマならではの展開がこの先にあるわけだけれど、この作品の特徴は、自然の木々のそよぐ音や月、雲などの佇まいなどの機微への感受性である。
老女の徳江さんが感じているそれらの息吹ということだけではなく、そういった人々の生活やふるまいを俯瞰するようなカメラの目線で、そこのなかから湧き出てくるのが、自然がなす力の強さだ。
「人間」というものがここに存在している。それは、どんな人であろうとも、気まぐれなるまでの宿命を負わされたとしても、平等に「生きることの意義」を持っているのだということを伝える。
徳江さんは言う。小豆であろうとも、芽が出て風雨に晒され、太陽の光を受け、そして豆として一粒一粒が取り出されて、我々の手元に届けられる。その過程の音を聞いているのだと。
この世に生を受けてのあらゆる生きとし生けるものは、どのような状況であろうとも大切な存在なのだということに改めて気づかせた。
ところで徳江さんを支える、どら焼き店に通う女子中学生役を内田伽羅という人が演じていて、友人の娘さんによく似ていて、これにはとてもドッキリした。
■スタッフ
監督、脚本:河瀬直美
原作:ドリアン助川
■キャスト
樹木希林:徳江
永瀬正敏:千太郎
内田伽羅:ワカナ
市原悦子:佳子
水野美紀:ワカナの母
■製作
2015年、日本・フランス・ドイツ合作
■映画トレイラー →
https://youtu.be/N--RamCBd8s