『文学の空気のあるところ』(荒川洋治)に、こころ落ち着く
新聞の書評に出ていた『文学の空気のあるところ』(荒川洋治、中央公論新社)を読み始めた。
これは「夏の文学教室」という、日本近代文学館が主催した講演会からの採録。まさに真夏の今に読むことがぴったりだ。第一話は、「昭和の本棚を見つめる」というもの。
目の覚めるほど鮮やかなる切り口に、頭のてっぺんからひんやりとした空気を浴ているかのような快さに酔いしれる。
“たとえば詩に例をとると、数は少ないけれど、いい詩を書いている詩人がいる。でもその人の詩って、ほとんどの人は読むことがない。詩以外にも、そういうものはありますね。いま読まれていないもの。関心をひかないものは何か。それを考えれば、逆にこの時代がどんな時代なのかが見えてくる。何か不足だなと感じたとき、何かが足りないと感じたときは、いま読まれていないものに目を向けるといい。「読まれていないもの」のなかにあるものが、いまの人にはかけているものであり、だからいまはそれが必要なのだというふうに見ていくべきだと思います。”
なるほどなあ。