『解錠師』(スティーヴ・ハミルトン)・・・ミシガンに育んだ男の矜持と恋
『解錠師』(スティーヴ・ハミルトン、ハヤカワ文庫)は、ある事故をきっかけに周囲に対して心を閉ざした男が、美しい少女・アメリアと出会い憧れ恋に落ちることで、鍵師としての腕を磨かざるを得なくなったジレンマが見事だった。
鍵師マイクルは、依頼主に対して絶対服従を課せられている。どうしてそのようになったのか。次第次第にそれは明らかになっていく。一つ一つ箱を開けていくかのようなこの小説の作法そのものが、まさに鍵を開けていくような感覚に似ている。
鍵師が最後にこじあけたものは、何だったのか?小説のクライマックスは、まるで映画を観ているかのようだった。
ミステリーなので、ストーリーをこれ以上は紹介しないが、ミシガン州、デトロイトやアナーバーという大学町が大きな舞台。そのあたりの街のにおいや雰囲気が、零れ落ちるかのように描かれている。
僕の学生時代の友人のひとりが、その周りで会社を興して日本には帰らないという。その彼にも紹介したいなあと思った。