バーンスタインの流麗と華麗:シベリウス・交響曲第5番

シベリウスファンの友人の手前、あまり言えなかったことがある。中学生の頃、ブラスバンド部に入っていて、演目の一つに『フィンランディア』があり、毎日毎日練習に明け暮れていた。僕のパートはホルンでそれほど難しくはなかったのだけれども、あまりに繰り返して演奏しているうちに、この管弦楽曲作品が苦手になっていた。演奏会では張り切って演奏をするにしても、だ。

それもあって、この作曲家の管弦楽曲や交響曲に寄り添っていこうという意欲が出なかった。唯一、ヴァイオリン協奏曲には、その透徹なソリストの音色と響きに惹かれていた。

そんななかで、『シベリウスと宣長』(新保祐司著)を、あまり期待せずに読んだわけで、それまで抱えていたトラウマとのギャップが、「聴きたい」という意欲を掻き立てている。

この著者は、レナード・バーンスタインという指揮者をそれほど好んでいないらしいが(僕も同じ)、そんな彼は、ウィーンフィルと組んだ第5番(ライヴ録音)は、別格的に素晴らしいとしている。1987年9月の演奏だ。次のように書いている。

“このウィーン・フィルの演奏は、まさに圧倒的である。フィンランド、あるいは北方の味わいなどという小癪な鑑賞を吹き飛ばす。このウィーン・フィルのシベリウスは、およそのヘルシンキ・フィルのシベリウスよりすばらしい。ウィーン・フィルのシベリウスは、ヘルシンキ・フィルのシベリウスよりもシベリウスである。まさに、フィンランドのシベリウスではなく、西洋音楽上のシベリウスになっているからである。”

ようやっとその音盤を手に入れて、何度もじっくりと聴いている。

敢えて自分が寄り添おうとはしなかった作曲家、心を寄せ付けなかった指揮者。そしてトラウマがぶつかりあいながら、怒涛の嵐が、いま、僕の身の中で渦巻き、連鎖反応を起こしている。

シベリウスは、自然と大地を礼賛し祝祭し、そのエネルギーは地球全体のマグマを天につなげて解き放つかのような世界を作っている。

ちょうど、Youtubeに、このライヴ演奏の録画がアップされていて、それを観ることで、さらにその渦のなかに巻き込まれている。心地よい。とても、心地よい。(CDの演奏とまったくおなじ音源だ。)

■シベリウス・交響曲第5番変ホ長調・作品82、バーンスタイン指揮、ウィーン・フィル(録音:1987年9月、ムジークフェラインザール) →https://youtu.be/vdXFVw_ceeo

   

シベリウス:交響曲第5番&第7番

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 / ユニバーサル ミュージック クラシック

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Commented by maru33340 at 2015-05-19 08:21
この演奏は本当に凄くて、バーンスタインの晩年に到達した境地を感じる。
バーンスタインとウィーン・フィルとの共演は、ブラームス、シューマン、ベートーヴェンどれもお薦めなり。
Commented by およう at 2015-05-19 09:03 x
こちらのシベルウスを聴きながらこのコメントを打っています^^ 部活でホルンの練習が続く様子が微笑ましいです。完璧に向かっての指導者の心意気も(^^♪ ウイーンフィル、スケールの大きさが伝わってきます。私はやはりヴァイオリン協奏曲が好きでーす。本を読みましたら変わりますかしら(^_^)v
Commented by sara at 2015-05-19 10:30 x
好きなものに出会えるのは幸福ですよね。1つの音符、1冊のスコア、かつて音楽家が懸命に書き記し、過去のそれを、今はいない音楽家が懸命に空間に放ち、現代の私たちが受け取る。ある日偶然ここを訪れた私も、シベリウスってやっぱり好きだな~と思いました。出会いに感謝です。
Commented by k_hankichi at 2015-05-20 07:08
maruさん、バーンスタインっていうのは苦手でしたが、これは別格ですね。ブラームス、シューマン、ベートーヴェンもですか。これはもう時間が足りない・・・。

おようさん、はい、本を読むと変わります。お薦め。

saraさん、まさに、音楽と言うのはそういうまさに奇跡的なる出会いだと感じます。
by k_hankichi | 2015-05-19 00:17 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(4)