'Elsa & Fred'(『トレヴィの泉で二度目の恋を』)の旅情的心情
『トレヴィの泉で二度目の恋を』(原題'Elsa & Fred')を、神奈川の二番館にて観た。シャーリー・マクレーンとクリストファー・プラマーが主演なので、懐かしさがこみあげてきて訪れてしまった。
夫とは長らく別居しているエルザ。彼女は、アニタ・エグバーグとマルチェロ・マストロヤンニが演じたフェリーニの『甘い生活』に虜になっている。その彼女のアパートメントの隣人に、妻を失ったフレッドが引っ越してくる。
エルザはフレッドに一目惚れし、しかし彼は自分自身の世界のなかに籠ろうとする。二人の気持ちが少しづつ近寄っていくそのテンポは、なんとも遅々としていて、しかし、それは躊躇う彼らの年齢がそうさせるのだ。
一歩進んで二歩下がる。そういうことが何回か繰り返されて、しかしとうとうフレッドはエルザに心を開き、彼女が夢に見たローマをともに訪れる。そしてトレヴィの泉にて熱い抱擁を交わす。
ストーリーはおおむねそのようなもので、あまり感興があるものではない。しかしこの映画が素晴らしいのは、その舞台に、ニューヨークでもなく、ビヴァリー・ヒルズでもなく、ニュー・オルリンズという古式ゆかしい、のんびりとした街を選んだことにある。
僕はこれまで、このルイジニアの街を訪れたことはなく、単に黒人が奏でるジャズの地、そしてだからおそらく、うらぶれて退廃的な街だろうとしか思っていなかった。
そんななか作品では、米国のコスモポリタンには無い、広くゆったりとしたそして美しい街並みや、緑が映る窓の風情などに溢れていることを知る。静かに流れる音楽とともにそれらは素晴らしい。
本作は、緩やかでちょっと温い米国南部の空気のたおやかさのなかに生きる人々の旅情的心情を味わう、そういう映画なのだと思った。トレヴィの泉は付け足し話にしか過ぎない。
■スタッフ
監督:マイケル・ラドフォード
脚本:アンナ・パビニャーノ、マイケル・ラドフォード
音楽:ルイス・バカロフ
■キャスト
シャーリー・マクレーン:エルサ
クリストファー・プラマー:フレッド
マーシャ・ゲイ・ハーデン:リディア
ジャレッド・ギルマン:マイケル
クリス・ノース:ジャック
■製作
2014年、米国
■『トレヴィの泉で2度目の恋を』 トレイラー→
https://youtu.be/vjsRfo6gO1E
■米国版“Elsa and Fred” Official Tlailer →
https://youtu.be/TnORJy_2tzg