こころに馴染む宮沢章夫『長くなるのでまたにする。』
宮沢章夫のエッセイはいつも心に共鳴する。
最初は、『わからなくなってきました』(新潮文庫)だった。
「9回裏、8点差のゲームが3点差に。2死満塁で絶好調の3番打者登場、緊迫した場面で、アナウンサーが発する「わからなくなってきました! 」という叫び。この紋切り型発言って、いったいなんなのか?」
そういう記載で溢れる作品。まさに、自分が何か心にひっかかるなあと思っていたことが、宮沢さんによって改められ、心に引っかかっていた罪悪感が解き放たれる。
そして今日は、『長くなるのでまたにする。』(幻冬舎)である。
「ファッション通信 -「どう呼べばいいのか」」からは、以下だ。
“そして、若い女性編集者は、「ジーパン」という呼び方が古臭いという。ジーンズがもっともふさわしいと思いそう表現したが、それでもなお、「デニム」と呼ぶ連中はいる。・・・(中略)・・・なにしろ「デニム」は「ムカデ」に似ている。そんな恐ろしいものをなぜ人は穿くのか。”
うん、うん、そうそう!意味なく嬉しくなる。
せっかく咲いた桜の花びらが、散りゆくことを横に見ながら、必要以上に手に汗握るほどに嬉しくなる夜半である。