なんとなく、合わなかった。『33年後のなんとなく、クリスタル』
『なんとなく、クリスタル』のあとの年月を経た後の主人公や、それを取り囲む女性たち、世の中の状況を綴っていく。過去と現在が交錯し、今のことかと思えば昔のことを引用し、また、思い出が現実に重なっていく。不思議な感覚に包まれていく。『33年後のなんとなく、クリスタル』(田中康夫、河出書房新社)。
いま、僕はどちらに居るのか。僕自身の時代とも交錯する。しかし登場するシーンが違う。表参道や、愛宕、麹町。そしてイタリアンの料理、ワイン、デザート。一方、長野県知事時代の政治的な改革と県民たちとの建設的なやりとりの数々。
本の全体の五分の一ぐらいが脚注になっているのは、最初の作品も同様なのだろうか。本文を読みながらも、脚注に飛びたくなって、しかしそこにはあまり重要なことは書かれていない。それでもページを往ったり来たり繰っていく。だんだんと使役のようにも感じてくる。
小説は33年を経ても、なんとなく、合わなかった。
◇クリスタルな東京の朝。