『銀幕の銀座』(川本三郎、中公新書)は、昭和時代の映画をもとに、銀座のかつての佇まいを思い出す本だった。
“昼休みには女性社員たちが屋上でくつろぐ。昭和十年代にもこういう光景が見られたか。屋上からはまだ外濠川も見える。川べりの泰明小学校も。この時代、銀座はまだ「水の東京」の面影を残している。”(「東京の女性」より)
原節子が外車販売のキャリアウーマンとして頑張る映画を紹介する章だ。しかしそれよりも、僕には泰明小学校の北西側に、外濠川が流れるシーンを想像した。あの、有楽町のほうからコリドー街に沿った場所は、かつては明るく拓けた川が流れていた。
児童たちの嬌声が跳ね返る水面。東京の街中にある楽園がそこにあるのだ。
■昭和8年の「日劇」と「泰明小学校」(空から眺めた大東京-數寄屋橋附近、大東京冩眞案内刊[昭和8年]より)。
http://www.library.city.chuo.tokyo.jp/bookdetail?23&num=2267998&ctg=1&area=2&areaimage=1