日比谷図書文化館での、坂と橋の展覧会を観たあと、それらの冊子を紐解いていた。坂があるところはよいのだけれど、東京には斜面を階段で対応している場所がたくさんあるという。そんな佇まいを描いた本があった。『東京の階段』(松本泰生、日本文芸社)。
東京にこんなに沢山の階段がある。それは朧げながらわかっていても、その地のすべてに足を運ぶことはなかなかなく、だからこの本には、さながら旅行誌のような楽しみがある。東京の名階段126!!と題されて、駿河台の男坂、女坂の紹介から始まり、文京区春日の土の段坂で終わる。
最も高低差があると紹介されているのは、愛宕山の男坂で、それは20メートル。86段。傾斜37°。同じ高低差を女坂では107段で上るという。
あの坂は確かにきつかった。しかしそのあとに神社でお祈りし、お賽銭を投げることまですることで、なんだか確かに一年分の願をかけた気になったものだった。
最近はといえば、早稲田から文京区関口に上るところの、胸突坂がきつかった。→
http://hankichi.exblog.jp/20831424/
ここは高低差15メートル、82段、傾斜16°だそうだ。それは、谷間の薄暗さから、まばゆいばかりのカテドラルに至るコントラストが素晴らしく、きつさだけが坂の尺度や意味ではないのだということを知ることができる。
新宿区下落合にも、薬王院西側階段というところがあるそうだ。そこは僕の友人が所帯を初めて持った場所からほど近くだったと思う。高低差12メートル、71段、傾斜16~28°というから意外にきつい。
東京の階段には、そういったときのことがらとともに、自分の有り様や、共に歩んできた人たちの軌跡のことを思い出す。坂よりも、さらにセンチメンタルになったりするのは、気のせいだろうか。
■胸突坂