ハチャトリアン姉弟によるブラームスのヴァイオリンソナタ
セルゲイ・ハチャトリアンと姉のルシーネ・ハチャトリアンによる、ブラームスのヴァイオリンソナタ全集は、静かな息遣いとともに心に沁み入る素晴らしい演奏だった。おもねるところがなく、かといって孤高だけを目指しているのではない、それはまさにブラームスという人に寄り添って、同じ方向に眼差しを送っているようなものに思う。
アンネ・ゾフィー・ムターによる演奏は、ビロード布で心を撫でられるように甘美なものだったけれど、ハチャトリアンのそれは、少し麻が織り込まれた上質なペルシア絨毯の上に自ら身を滑らせている、というような感じだ。
聴衆のためではない、そしてまた自分のためでもない。これは、作曲家に対して祈りを捧げるようなブラームスだ。
■曲目:
ブラームス
・ヴァイオリン・ソナタ第1番ト長調 op.78『雨の歌』
・ヴァイオリン・ソナタ第2番イ長調 op.100
・ヴァイオリン・ソナタ第3番ニ短調 op.108
■演奏:セルゲイ・ハチャトリャン(ヴァイオリン)、ルシーネ・ハチャトリャン(ピアノ)
■収録:2012年7月、8月、ロンドン、ウィグモア・ホール
■音盤:フランスNaive V5314