誰だったか、「譜面を見て頭のなかに響くことが音楽になって出てくる」というようなことを言っていたように思う。
先の週末にセルゲイ・ハチャトリアンのバッハを聴きながら、ああ、バッハの譜面を通じて、この人に聴こえるのは、「いたわり、優しく寄り添うこと、黙って沁み入るように思い遣ること」、というようなことなのだな、と思った。
一方、「譜面どおりの音を出している、それがここに書かれている音楽よ」と云わんばかりのピアニストも居る。
どちらがどうだ、と言うわけではないのだけれど、「愛」や「品格」、あるいは目線を違えて「品性」、というようなことがらは、聴く側からは分かってしまうように思う。
人の目や耳は、思っている以上に鋭敏なのだということを、自分でも分かってハッとする。