旅先から帰るとき、いや、或いはそうでなくても、都会で帰途につくとき、一分一秒でも早く帰着する方策を画策している自分を発見する。
携帯ガジェットを駆使して、最短距離を探す愚。その企ては、なにか蟻が水に浮きながら、も掻いている姿に似ている。
なに故に急ぐのか。なに故に出し抜こうとするのか。生き抜く姿が滑稽になる。
隣の席では、ほうじ茶を飲みながら餡パンを食うおばさんが居る。ジュリアス・シーザーの劇を観てきたらしい。感慨深げだ。
最終の新幹線は三島行き。途中で降りなければ、そのまま温泉街に着くやも知れぬ。
時間を詰めようとすることの虚しさがここにある。明日は分からぬ我がながめせしま。今宵はどこに行き着くの。