ナタン・ミルシテインによる最後のリサイタル

「最後の」と名がつく演奏やら作品は、殊更に聴きたくなる。『ナタン・ミルシテイン 最後のリサイタル』と題された音盤もそれだった。

1986年6月17日、スウェーデンのストックホルム、ベルワルド・ホールでのライヴ演奏は、82歳になっていたミルシテインが引退される前の最後のものとなった。

ベートーヴェンのクロイツェルソナタやヘンデルのソナタ、プロコフィエフやパガニーニ、リストなどが演奏されるなか、やはり一際立つのは、バッハの無伴奏パルティータ第2番、無伴奏ソナタ第3番だ。

知らずに聴けば、これが老翁によるものと思う人は絶対に居ないだろう。それは仁王門のようにデモーニッシュなシャコンヌで、その力は、弦を押さえ滑らせる指から血が出ているのではないかと思うほどだ。怖くなる。

その空間には、ミルシテインが音楽に追い求めた「生きることの真摯さ厳しさ」のようなものが漂う。その年になってまで和らぐことのない、真理を探ろうとする揺るぎない気持ち。

演奏を終えたあと圧倒されて息を吐くことも出来なかったろう観客の気持ちが伝わってくる。

無伴奏ソナタ第3番からは第4楽章アレグロ・アッサイ。こちらは衰えぬ技巧が披露され、解放感をようやっと味わうことができる。

みちのくへの道はミルシテインを深く味わうひとときとなった。

クロイツェル・ソナタ 最後のリサイタル

ミルシテイン(ナタン) / ダブリューイーエー・ジャパン

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Commented by およう at 2014-07-30 22:10 x
まー!何て懐かしいヴァイオリニスト!!(^^♪
Commented by k_hankichi at 2014-07-31 08:07
おようさん、はい、昔のひとと思っていたら1980年代半ばまで、演奏されていたと知り驚きました。
Commented by maru33340 at 2014-08-01 08:07
ミルシテインのバッハ無伴奏は、数ある同曲の中でも僕が最も愛聴しているものです。
最後のリサイタル聴きたし。
Commented by k_hankichi at 2014-08-02 08:28
maruさん、買い求めに行きます。
by k_hankichi | 2014-07-30 09:54 | クラシック音楽 | Trackback | Comments(4)