先週の土曜日はお台場での東京国際ブックフェアに出掛けた。目玉は筒井康隆の読書推進セミナーだ。お題は「読書の極意と掟」。
どんなものかと楽しみに席についたが、3000人を超える聴衆の幾人かは驚いたのではなかったか。何せ、講演は一時間十分のなかの三十分だけで、残り四十分が、自作『奔馬菌(ほんばきん)』の朗読だったからだ。
講演では、読書の極意は手当たり次第に読むこと、それに尽きるとする。
世界文学全集を読む、アンソロジーを読む、海外文学全集を読む、ハヤカワミステリを全て読む。
しかしやはり古典を読んでから、他にとりかかるのが良い。苦手かもしれんが、現代作家の新訳によるダンテの『神曲』やミルトンの『失楽園』。
それらが手におえなければ近代だ。バルザックやゾラになる。ゾラは良い。『ナナ』や続編の『居酒屋』はそのときの流行作家だ。ああ、ドストエフスキーを忘れちゃいかん。
現代に近くなればクロード・シモンやアラン・ロブ・グリエなんてのもいい。このほか、ル・クレジオの『物質的恍惚』『調書』、ミッシェル・トゥルニエの『赤い小人』である。
そうして好きな作家ができれば、全集を探して読むことだ。
読書の極意は手当たり次第に読むこと、それに尽きる、とすれば、僕もまさにそういう案配で今を過ごしているから、筒井氏が言うように、間もなく物を書く(作家業)に目覚めるのかしらん。
小説『奔馬菌』は、愉快そうな話しで筒井氏の朗読も巧み。しかしそれはいつしか音楽のように聞こえ始めて午睡に誘われ、気づいたときには拍手喝采で講演は終わっていた。
まさしく閑話休題だった。
話が苦手ならば朗読をすると良い、ということを学んだ。