訪れたくなった・・・『俺のイタリアン、俺のフレンチ』(坂本孝)
先だって昼間に銀座の新橋寄り界隈を歩いていたとき、まだ二時過ぎだというのに、行列をなして人だかりを作っている店があった。ああ、そんなに旨いのかねえ、高い金を払うために並んでいるとは、お気楽なことだなあ、と思ってそのまま通りすぎた。
それがこの本に紹介されている店舗だということは、書名を見てすぐにわかった。『俺のイタリアン、俺のフレンチ』(坂本孝、商業界刊)。
見ただけで気恥ずかしくなるこの店名のレストランは、しかし一般的な高級レストランの五分の一の価格で、同じ味と品質の料理を提供する、というものだった。原価率は88%でも利益が出るという。しかも料理人はミシュランの星を獲得している店の経験者だったり、前総料理長だったりする。
いったいどうなっているのか。その秘密は回転率にあった。これは商売の基本なのだけれど、だれも真面目に取り組んだことがなかった。
読んでいて、じんわり涙が滲んでくる。目から鱗の痛快なる指南書で、すぐにでも銀座八丁目に足を運びたくなった。