みちのくの朝はうっすらと雪国だった。定宿の窓からの白一面の世界のなかで、遠くの山裾から太陽が昇ってくる。静かに昇ってくる。音もなく鳥の群れが舞う。
四月になれば、八重の桜が見られるだろうか。ここからかの地はそれほど遠くはない。覆われた雪のしたで静かに芽生えを待ち構える生命がある。
電車に乗り、目指す場所に着いた。閑散とした駅前にも朝がある。一昨日はあったかかった梅の花も咲きそうだったが今日は上がらない、東京は都知事選大変だよね、でもこっちのことは誰も観てねえんじゃないか、じゃ寒いから気を付けて。運転手は矢継ぎ早に語る。
みちのくの朝はうっすらとしかし濃い雪国だった。