『LEAN IN』(シェリル・サンドバーグ)と降りしきる雨
晴れ渡るサンフランシスコで乗り換え、国内便で降り立ったオレゴンは、雨だった。気温も15℃と寒い。この地方は9月半ばからは雨季だそう。降りしきる冷たく激しい雨を前にすると、こんな西海岸の北の地まで産業を興していく西洋人たちのエネルギーの底知れなさを、しみじみと感じた。ちょうど機中で読み終わった本の著者の不屈の気持ちがそこに重なった。極東人には出来ない芸当かもしれない。
本はシェリル・サンドバーグの『LEAN IN』。題名の意味は、一歩前に踏み出せということ。財務省首席補佐官、グーグルの副社長などを歴任したあとフェイスブックのCOOに就いた人だから、どんなに成功物語の薀蓄に溢れているかと思いきや、さまざまな差別に遭遇しながら、都度あるべきことを考え、二人の子供を産み、仕事と家庭を両立させて今に至っている努力の人だった。周囲に働きかけ耳を傾け、何度も自省し、そしてそれを次につなげていく姿は、性別に関係なくとても大切なことだと感じる。この人に対する好き嫌いはあるのだとは思うが、僕はポジティブだ。
MITの元教授のフレッド・コフマンによる研修を受けるくだりがあり、次のようなことが書かれていた。
「私の見方(私の真実)があれば、相手の見方(相手の真実)がある。これを理解することこそが円滑なコミュニケーションの第一歩だ。」
サンドバーグは、自分ではこのことはまだまだできていない、挑戦し続けるつもりだ、と語っている。才知に冴えるだけでなく、こういう謙虚さが良い。
最近ハーバード・ビジネススクールで、使われ始めたリーダーシップに関する表現も紹介していて、これは良いなあと思う。
「リーダーシップとは、あなたの存在によって他の人の満足感を高め、あなたがいなくてもそれが維持されるようにすること。」
僕は、さまざまな人の考え・意見・スタンスに耳を傾け、咀嚼し、自分のなかに反映できるような人間にはなかなかなれないのだが、つかの間でも、刺激を受けたことが、何かの変化に繋がるのかもしれない(と信じる)。