ようやっとプーシキン、なかなかどうして蒲田温泉・桃李境
横浜美術館の『プーシキン美術館展』をようやっと訪れた。
プーシキン美術館展 ココ→
http://pushkin2013.com/index.html
プーシキン美術館 ココ→
http://www.arts-museum.ru/?lang=en
古典主義、ロココという区画で、ジャン=バティスト・サンテールの「蝋燭の前の少女」にとても心惹かれた。1700年頃の絵なのだけれど、蝋燭のほのかな炎のもと、すこし身を傾けながら手紙をしっかと読む眼差しの優しいことよ。
次に心が呼応したのが、ルイジ・ロワールという画家の「夜明けのパリ」という絵(1880年代後半~1890年代前半)。初めて知った画家なのだけれど、この人のパリからは、音が聞こえ、雨に濡れそぼった石畳からはその匂いが立つよう。人々は、まだ暗い朝、歩道の横にある屋台で朝餉を採っているのだけれど、無言で競うように飯にありつくその音だけが生々しくも聞こえてくる。
ココ→
http://www.newpaintart.ru/artists/l/loir_l/paris_at_dawn.php?lang=en
そしてカミーユ・コロー。彼の絵はどれもが、風にそよぐ木々の葉や、それらのざわめきが聞こえてくるようで、好きだ。「突風」という絵(1860年代半ば~1870年代前半)は、風を受けてひしと歩く女の姿だけでなく、空を覆うように聳える木々のあいまに見える夕暮れの空が美しく、しみじみとする。
新たな発見をしたあとは、その神経を鎮めるために、京浜急行で多摩川を超えて蒲田へ。今日定めたのは、「蒲田温泉」。鄙びた商店街(出村通り共栄会)の奥にあるこの温泉のインパクトは強い。
もちろんここは本当の温泉で、ナトリウム炭酸水素塩・塩化物鉱泉の湯の黒さは群を抜く。水中視界5cmという感じ。温い湯は、42.2℃、熱い湯は45.2℃あり、熱いほうは、首まで浸かることはできず腰までで退散。しかし、隣にいたおじいさんたちの会話は、つぎのようで、慄いた。
「こっち(熱い方)の湯は最近温くなったよなあ。」
「ああ、これじゃあ湯っていうもんじゃあない。誰か水でうめているんか?」
「いやー気合がなくなってるんだよ、ったく」
蒲田温泉・・・ここは昭和40年代の時間が止まったままの桃李境だった。
■ジャン=バティスト・サンテール 「蝋燭の前の少女」
From:http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Jeune_Fille_lisant_une_lettre_%C3%A0_la_bougie_Jean-Baptiste_Santerre.jpg
■カミーユ・コロー 「突風」
From: http://www.wikigallery.org/wiki/painting_164371/Jean-Baptiste-Camille-Corot/Gust-of-Wind,-1866
■『蒲田温泉』(バクザンの歌) ココ→
http://youtu.be/khNGo3ZEDH8