遣る瀬なさは希望に変わるか儚い夢か・・・ドラマ『Woman』
ここ10年来、会社の退勤時間を促す構内放送は、ドボルザークの交響曲第9番第2楽章「家路」だ。ノーオーバーワークデーは午後6時に、それ以外は午後10時にメロディが流れる。
そのたびに、あー、やめてくれぇ~、この忙しいときに遣る瀬ない気持ちにさせるのわぁ~、と唸っていた。やる気を無くさせるには300%の効果がある。つまり退勤促し効果としては満点なのだが、いくらなんでもそこまで悲しく落ち込ませる必要はないよなあ・・・と感じるのだ。
しかし、そんなメロディが、なにか「希望」のしるしなのだと思わせてくれるものに出会った。日テレ水曜夜10時のドラマ『Woman』。
脚本は、僕が一番注目している坂元裕二だ。直近から遡ってみれば、『最高の離婚』、『負けて、勝つ(吉田茂)』、『それでも、生きてゆく』、『Mother』、『チェイス~国税査察官~』など、僕が填まったドラマは実はほとんどが坂元によるものだ。
さてドラマ。件のドボルザークは、そのメロディを歌詞とともに母子が口ずらむところから始まる。亡き父親との思い出の曲なのだ。母子にとっては、これは辛い時にも父親の優しさを思い出す希望の曲なのだ。
母、青柳小春(満島ひかり演じる)と、子供の青柳望海(鈴木梨央演じる)、青柳陸(高橋来演じる)は、父親を亡くした母子家庭にある。収入があまりない一家なのだが、母に病気が見つかる。そんななか、父親に死をもたらしたのは、小春の異父姉妹の植杉栞(二階堂ふみ演じる)の嫉妬が絡んでいたことが分かってくる。
実の母親、植杉紗千(田中裕子演じる)はそれを知り、あまりの衝撃にそれを隠すことを子に言い含める。何もしらない紗千の夫(小林薫)の、風船が萎んだような腑甲斐なさが、哀れさを加速する。
第三話まではこんなかんじだが、この先の坂元ドラマは、もうどんな悲しみが待ち受けているか分かるようで分からず、だからテレビの予告編さえみるのが憚られる。
人生の「旅路」は遣る瀬ないままなのか、希望に変わるのか、儚い夢に終わるのか。いま、『Woman』が見逃せない。
■『Woman』のトレイラー→
http://youtu.be/_NFO7kLjhao