関東は、平年より10日早い梅雨入りになった。今朝も弱い雨が降り続けている。
僕は雨や台風や雪が好きなので、梅雨もその例外ではなく、なにか気持ちがほっとしている。
雨に慕情を感じるようになったのは、小学生のころだったか(或いはもっと前からか)、永谷園がお茶漬け海苔のパッケージのなかに一枚、安藤広重の「東海道五十三次」のカードを入れ始めたころからのような気がする。
袋のなかには毎回異なる宿場のカードが入っていて、そのなかに訪れたことがない雨降る風情の街道や村が描かれているものがあるたるたびに、遠い昔と遠い場所、遠い人々の思いが重なるようなかんじで、陶然とした気持ちになるのだった。
ちょっと薄暗い部屋の夕暮れに、そんなカードの数々を机のうえに並べて、絵のなかで歩いている人々の旅の軌跡を繋げて、空想の話を考えたりした。
いまも雨は不思議と気持ちを落ち着ける。静かに沈みゆく感覚は水のなかに居る感覚とも似ている。