今夕は、ドイツのひとと盃を酌み交わした。場所は僕が選び、料理(和食)は僕が選び、酒も僕が選び、というもの。
乾杯のビールのあとは、不ニ才[ぶにせ]という鹿児島の芋焼酎で通してもらった。マニアックなる佐多商店による蒸留。
はじめは、なんだこの日本人は、ドイツ人を舐めやがって、と頑ななる場であった。
しかし、時が過ぎ行くにつれ、一対一のビジネス対話は、話題が尽きゆき、しかたなく、奥の手を出すことにした。
トニオ・クレエゲル、ハンス・ハンゼン、インゲボルク(金髪のインゲ)、目指すトラヴェミュンデ、フェリックス・クルル、ハンス・カストルプ、ヘルベルト・ケーゲル、北ドイツ放送響、フォン・オッター、ゾフィー・ムター、カスパル・ダヴィッド・フリードリッヒ、ガリガリ博士、ノイエ・ザッハリッヒカイト、ベルンハルト・シュリンク、フェルディナント・シーラッハ。
とまあ、並べ尽くすと、流石のドイツ人も、そこまでは及びがゆかず、という感じ。
相手はいつしか、「朝はばら色に輝きて」の面持ちとなり、さらに畏れをしらず我は、かの西洋人を魅了し尽したのだった。
明治のころの岩崎弥太郎の気持ちが頭をかすめた。