一つの時代の予感・・・カティア・ブニアティシヴィリ
先週、横浜のCDショップで買おうかと思いつつ躊躇った音盤。それが、カティア・ブニアティシヴィリのショパンアルバムだった。
憂いのある濡れた眼差しでこちらを見つめる彼女の姿は、それがクラシック音楽のピアニストには思えず、スレンダーな新手のジャズシンガーかと思った。半開き気味の口元とその胸元を見てどきどきし、音盤を手に取ることまではしても、気恥ずかしさも相まって思いとどまった。しかしその後ろ髪はずっとずっと続き、家に帰って気を取り直してネットで買い求めてしまった。
さてこのCD。ブックレットはモノクロ写真から構成されていて、ポーランドの凍てつく冬とカティアのメランコリーが交錯する。曲を聴く前にまず魅入ってしまったのは、ボーナストラックにあるエンハストCDフォーマットでのプロモーションビデオだ。「ワルシャワ―パリ」と題する。これだけを観ただけでも、その美貌はただものではないことがわかるだろう。ちょっと調べたら、これは彼女のHPにもアップされていた。ココ→
http://bcove.me/kvu3ow16
音楽はオールショパンプログラムだ。どの演奏も、いままで聴いたことがないアコーギクなと言ってよいもので、だからびっくりすることがたびたびある。ピアノソナタ第2番の出だしからそうで、何の曲が始まったのかが分からないほどだ。
彼女はグルシア(英語発音ではジョージア)の人だということで、ヴァイオリニストのリサ・バティアシュヴィリといいこの人といい、身体のなかに沁みこんだ音楽が流れ出てくるような感じがする。西洋とアジアのはざまにあるこの地ならではのものなのだろうか。複雑な歴史のなかで芸術について、音楽について、自分がしっかりと核とすべきものはなになのかを自然に考えつくす、というような。
天は二物を与えることがあるということはこれなのかと思う。一つの時代の始まりの予感がする。
■曲目
1. ワルツ第7番 嬰ハ短調 作品64-2
2. ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 作品35「葬送」
3. バラード第4番 ヘ短調 作品52
4. ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 作品21(パーヴォ・ヤルヴィ指揮、パリ管弦楽団)
5. マズルカ第13番 イ短調 作品17-4
6. ボーナス動画「ワルシャワ-パリ」
■録音
1,2,3 & 5: 2012.3.12-15, イエスキリスト教会、ダーレム、ベルリン
4: 2011.9.13&15、サルプレイエル、パリ
■音盤
Sony Classical 88691971292