上海土産に月餅がある。それはいま家のリビングのテーブルの上に鎮座している。蘇州夜曲の雰囲気の妙齢の美しい人が、箱に描かれている。18個入りだ。
一つだけ減っている。家人たちは遠巻きにして、それ以上は触られずにいる。
横浜中華街で買ってくる月餅だったらば、すぐさまに無くなるのに。減らない。
蘇州夜曲の女性が怖いのか。
否。
もったいないと思って遠慮しているのか。
否。
期限切れなのか?
否。
上海帰りの月餅は、いつまでもテーブルの上にある。
その理由を語るのも怖い。
「まんじゅう怖い」という落語よりも怖い。