ワルター・コロムビア響のブラームスに懐かしさ溢れる
先週末、神保町のいつものレコード店で、聴き覚えのある音が鳴っていた。心身が呼応した。
きっとそうに違いない、とカウンターを振り返って、飾ってあるCDジャケットを見てみれば、案の定、ブルーノ・ワルター指揮、コロムビア響によるブラームスの交響曲第二番だった。
お店のお姉さんから、「いいわね、これ」と言われ、咄嗟に「学生時代にだいぶん聴きました」、とポツリと返事したものの、気になって仕方がない。
その様子を見てとったのか、「あ~確かもう一セットあったわ、あ、これね、こっちはBランクだから2500円。これひとつで序曲もなにもかも全部揃ってて良いわよ」。
僕らの世代は、“全部揃い”とか、“全集”という言葉には弱い(学生時代にはどう足掻いても買えぬ涎垂のものだったからだ)。結局、いくつかの音盤にそれを加えて帰宅していた。ブラームス交響曲全集、序曲全集。
さて、演奏について。言わずもがなの素晴らしさだ。特に第二番、第三番。やさしさと気品、泰然とした気持ちに包まれる。えもいえぬ心地好さ。第四番のニ楽章も、こんなに美しかったのか。妙なきもちにまでなるよう。
このCDは、音まで刷新されている。昔は、CBSソニーのLP時代の音がシャリシャリし過ぎていてコロムビア盤を買い求めていたが、マックルーアが生まれ代わってチューニングしたかのような透明でかつキレのある、そして豊かな響きなのだ。
年末にかけてワルターに回帰する予感がする、涼しい秋の朝だ。