歩きながらでも読んでしまう…『君がいない夜のごはん』(穂村弘)
朝のバスの車中で夢中になって読む。駅に着く。スクランブル交差点を渡りながら、まだその本を開いて読み続けている自分に気付く。
『君がいない夜のごはん』(穂村弘、NHK出版)だった。またも、はまってしまった。これで車に跳ねられたらどうしよう。跳ねられたあとも、地面に横倒しになりながらも、まだこの本を手に読んでいるのではないか。嬉しそうに、にやにやしている。そういうシーンが頭をよぎる。本望か。
しかしこんなフレーズに始めから出会えば、誰しもそうなるのでは。
“「生ハムメロンを初めて食べたとき、こんなおいしいものがあったのか、と思って感激したぜ」
さすがはロックンローラーだなあ、と感心した。未知への感受性が素晴らしい。
それにひきかえ私の脳は昔気質で困る。生ハムメロンどころか、ハーブティーにも駄目出しをしてくるのだ。
「味がしない。まともな飲み物とはとても想えぬ。葉っぱのゴミなんではないか」と脳はぶつぶつ云う。”
なんと爽快に伝わってくるのか。
穂村さんの直球ぶりに、どんよりと雲った空の朝も気持ちよいそよ風に変わる。