『すべて真夜中の恋人たち』…川上未映子の新世界

友人の薦めにはかならず何かがある。口数がすくないときには、特に。

川上未映子の新作『すべて真夜中の恋人たち』は、この作家の新境地を拓いたものだった。主な登場人物は三人しかいない。入江冬子、彼女が慕う年上の三束(みつつか)さん、彼女ど同い年の女、石川聖。

読みすすめるうちに、淡いため息が出てくる。静謐な無心さに憧れのような、頭を撫でてやりたいような、でも怖いようで躊躇いたくなる、そんな気持ちが湧いてくる。

せつないけども、ありえる世界。哀しいけども本人はそれを気付いていない世界。

向かい合って座る関係の二人。光についてだとか、音についてだとか、粒子についてだとかを、とりとめもなくぽつりぽつりと会話する。そのさきに何があるかわからない。しかし、こういう関係があることを知っている。淡い恋、静謐なる時間。

なにかが始まる予感。そして終わりが始まりに変わるとき。そんな、しずかて、しかし力がある小説だった。

すべて真夜中の恋人たち

川上 未映子 / 講談社

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Commented by maru33340 at 2011-10-21 20:45
手放しで誉めそやすというタイプの作品ではなくて、心が少し内向きの時に読むと、淡い雪が胸に降りつもるような、しんとした気持ちになる。そんな小説ですね。
Commented by k_hankichi at 2011-10-22 08:28
はい。ふかく、感慨とも安堵ともつかぬ溜め息をはきました。
by k_hankichi | 2011-10-21 18:40 | | Trackback | Comments(2)