『かわうそ』…秀逸なる小説

向田邦子の小説がわかる年齢になってきた気がする。短編集『思い出トランプ』(新潮文庫)は、のっけから驚いた。

『かわうそ』は直木賞というよりも、芥川賞なのではないか、と思うほど、じんと胸の奥にひびくものがあった。妻のことを、人の心を弄ぶかわうそだと思う男の気持ち。憐憫さえかんじるが、しかし男は真剣で、甲斐甲斐しいさが増す程に、胸騒ぎが憎む心に変わる。

『大根の月』の仕掛けの巧みさ。

『マンハッタン』にある男心の、ありがちな勘違い。しかしこんなに洒脱にさらりとは、なかなか書けない。

いま、バッハのマタイ受難曲を聴いているが、なにか向田さんの小説にBGMをつけるとすれば、こんな音楽なのかもしれないなあと思った。トルコの軍楽マーチよりも。

思い出トランプ (新潮文庫)

向田 邦子 / 新潮社

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Commented by maru33340 at 2011-10-13 08:02
僕も今、フォン・オッターのバッハを聴きながら、そんなこと考えておりました。
Commented by k_hankichi at 2011-10-13 19:17
そうなのです。なぜかバッハの声楽曲のような小説に感じます。
by k_hankichi | 2011-10-13 07:37 | | Trackback | Comments(2)