今日は痛む箇所を診てもらいに病院にいる。二つの診療科にかかっているので、朝から午後までかかる。
それぞれの科で、どういう理由でもう一つ受診しているかや状況を説明せねばならず、少し鬱陶しい。しかし単なる一患者だから、神妙にして従い、丁寧に答える。
そんななかの待合室は、人の多種多様を見ることができ、興味深い。こんなに皆異なるのか、こんなに違う振る舞い方があるのか、と驚く。
今日は、窓口で渡された問診票の記入用のペンが赤エンピツであることから、憤懣して、黒ボールペンを出すべきと改善を求める年輩の男の人がいた。僕が記入したあとだった。
僕は、ふつうとは違うなあと感じたものの、まあそういうものかと、そのまま記入していたから、その男の剣幕には驚き、あれ、そこまで言うべきだったのかと首をひねった。
その人にとっては赤エンピツは、ダメ出しとか修正、マイナスの要因が強くあるのかもしれない。しかし違和感を感じるごとにクレームしていたら血圧が上がるだけにも思う。
待合室の椅子にきちんと座ってきちっと背筋を伸ばして小説を読みすすめる老人もいた。この人はなにか端正である。きっと神風特攻隊の生き残りに違いない。
なにもせずにただ座りながら正面の壁を見続ける老婆。これは永遠と対峙しているようだ。
「アノ、イタミマス、ココノ、ナントイウノカ、ワカラナイガケドモ、ココガイタミマス」と格好よいブラジル系の若い男が看護婦さんに言うことが自然に耳に入ってきて、それは公衆の面前ではばかる内容で、聞いているほうが恥ずかしくなってしまった。
病院の待合はなにか、普段と違う世界に触れられる不思議な空間と時間だ。